第4話 歓迎会と自己紹介
めぐるによる晩御飯の準備が終わってから、早速歓迎会が始まった。
とは言え、普通に豪華なご馳走を食べながら談笑するだけの時間なのだが--
まずは、自己紹介から始めることになったのだ。
「どうも。司会を務めさせていただく、メイドの螺旋乃宮めぐるです。今日は速水ユウイチ様の歓迎会ということで、まずは皆さん、自己紹介から始めていきましょう」
「じゃあ、まずは俺から自己紹介するっす! 俺の名前は速水ユウイチ! 今年から大学生になります! 趣味は読書と筋トレ! チャラそうな割にストイックってよく言われます!」
ユウイチは、本人なりの丁寧に自己紹介をしてから、激しく頭を下げる。そんな彼に、4人の同居人たちが拍手を送った。
「じゃあ次はアタシね。初めまして。アタシは
アリナは、つっけんどんな態度で、前髪を指でくるくると弄びながら自己紹介をしてくれた。ツインテールで赤髪の、16歳くらいの女の子。
瞳の色はエメラルドの緑。強気な印象を与える、活発そうな少女だった。そんな彼女に続く形で、今度はクロードが、あらためて自己紹介をしてくれる。
「では、私も改めて自己紹介をしましょう。私はクロード。もう引退しておりますが、職業は死神でございます」
静かに頭を下げるクロードの次は、髪の毛のところどころが、染めたように白いウルフカットの女性だ。
「は、初めまして……! わ、わたしは、
「ご馳走に釣られて出てきたあんたが悪いわ。諦めなさい」
陰気で色白な女性、深白の願望を、アリナはつっけんどんな態度で切り捨てる。
なんというか、一昔前のツンデレっぽいな。あんまりラノベとかアニメは見ないけど……。
ツインテールの美少女を、ユウイチはそんな風に分析していた。
「じゃあ、次は管理人の僕が自己紹介をしようか。私は十日崎 弘人。君たちにあまり愛着は無いが、作者の人の想定を超えてくれたなら--敬意くらいは、持とうじゃないか」
--『作者の人』って本当になんなんだろう。というか、君たちに愛着は無いって、本来は『作者の人』のセリフなんじゃないのかよ。
ユウイチはそう思ったが、ツッコンでいいタイプの人かが分からないので今回もスルーした。
これが彼の本心だった場合、十日崎という男にとって、ユウイチは『愛着のない架空のキャラクター』に過ぎないのだ。つまり、自分が生きようが死のうがこの男は全く気にしない。
必要であれば積極的に殺しにくる可能性だってあるのだ。こんなに恐ろしいことは無いだろう。
「それでは、自己紹介も終わったことですし、早速ご馳走を頂きましょうか。それでは皆さん。ワイングラスに注いだブドウのソーダで……乾杯!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
めぐるが音頭を取ると、みんながグラスを掲げる。十日崎は、ユウイチ達に愛着が無いと言っていた割にはノリノリだった。ただ、誰とも会話せず、隅っこの方でひたすら生魚とサラダばかり食べている姿は、無愛想で孤独を好むタイプなのか、健康志向で食い意地が張っている人なのかはよく分からなかったが。
「それにしても、深白さんってむっちゃ食いますよね……」
「豪快な食べっぷりでしょ? 見た目とのギャップはかなりのものよ。あの人1人で、10人分は食べるんだから……」
呆れ顔のアリナと、ユウイチはそんな話をしていた。陰気で、おそらく引きこもりであろう色白な女性、深白。彼女は、華奢な体つきと大人しそうな見た目の割に、食べっぷりが豪快だった。
少し目を離した隙に、10枚の皿から料理が消えていたり、口の中で何かを頬張ったまま、両手にサンドイッチを持っていたりする。
ご馳走に釣られて部屋から出てきたと言われていたし、食べ物への執着はかなり強いようだと、ユウイチはそう考えた。
これから暮らしていくメンバーと、趣味や学業の話をしながら過ごす時間は、ユウイチにとってとても楽しい時間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます