第三七話 砲艦外交
「大事無いか? エシル」
「なんとかねー」
折り重なるスカーとエシルは、互いの無事を確認し合っていた。エシルは肘や膝を曲げた仰向け姿勢のまま、
「鍛錬の成果だな。よくやった」
「ありがとー。……でも、あんまり揺すらないでぇ」
微笑ましい光景を目にし、ふと気持ちが和らぐ。彼女は〝ひと味違う〟操艦に耐え切った今、我が主から祝福の抱擁を受けている。
「お二人共、ご無事で何よりです。……作戦の最終段階へ、移行します」
「うむ」
「あいさー」
モリガンの
『アフィニティ#Gへ、映像通信接続……完了』
スカーたちの居場所とは反対側の側壁モニターに、映像をカットインさせた。……望み通りの画が撮れている。第一四艦隊とゴード隊との間に、我らがスカイ・ゼロ艦隊が立ちはだかる画だ。そう知るのは俺とガゼルだけであり、その
『ええい! 耳障りな
宇宙港アモルからの通信が入る。
過熱が酷い。その苦しみにのた打ち回るのを
『映像配信、開始』
第一四艦隊と連合艦隊が
「発、ダンスカー艦隊母艦モリガン。宛、アモル国政府首脳」
先ほどの通信手は無視し、公共通信を最大出力で続ける。
「貴国の艦隊が、我が艦隊を不当に包囲している。即刻、停戦を命じて頂きたい。……
スカイ・ゼロ艦隊は不慮の事故で、惑星とリングの間で立ち往生した。その脇を突くように、手前には第一四艦隊が、奥には輪郭のぼやけた連合艦隊が包囲している。……そんなストーリーに映ることを狙った放送だ。
「我が艦はこの不当なる包囲に対し、貴国の判断を促す為に急派された」
『注意。後方から帝国艦隊接近中』
付近の
「我が艦に対する一切の艦隊行動は、我が要求に対する拒絶と判断する。貴国首脳には、回答のみを求める」
『注意。前方から帝国艦隊接近中』
恐らく、主星付近で
「我が要求に応えず、拒絶するのであれば……この事実を、貴国全領域へ知らしめたうえ――」
続く言葉に若干の
「貴国に宣戦を布告する」
流石に心がざわつく。
「貴国首都は、既に我が射程内に在り」
周りの艦もざわつく。
「繰り返す」
だがスカーたちには、動じる気配が無い。
「貴国首都は、既に我が射程内に在り」
主の命令を履行してるのだ。その自覚に後押しを受け、最後の口上を述べる。
「五分だけ待とう。賢明なる判断を願うや切である」
……もちろん、そんな巨砲も弾道魚雷も積んじゃいない。ブラフだ。強いて言えば、このまま
今のモリガンは、力走の過熱でノイズがバッチバチだ。あちらさんの走査機には、さぞかし恐ろしい姿に映っていることだろうよ。
(これも、ディセアを救う為……
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