第三二話 ゲイル星系へ
話はほんの少しだけ
『燃料と空気、確かに受け取った。星系図は届いているか?』
「うむ。確かに受け取った」
ジム代表とスカーが取引をしている。高圧
『ゆっくりもできん。本題に入ろう』
俺達は一時ブルート星系に別れを告げ、隣接するゲイル星系へと旅立つ。一一六五光年の距離を、約五分で跳び越えるのだ。その前にやるべき情報共有を行う。
『
「
『貴女とアイセナ女王の関係は?』
「互いに助け、助けられる盟友だ」
『最後に……ガゼルとは、何者だ?』
商人の情報網を、甘く観ていたかもしれない。
「我が臣下であり……AIだ」
『なッ……AIだと?!』
伊達男の声に、明らかな
「そうだ。他に
『あ、いや……失礼した。今は、無い』
「うむ。我らの
『承知した』
「信義は互いに確かめ合わねばな。……さぁ、跳躍に入るぞ」
『ああ、いつでもいけるぞ』
スカーが
(……)
あの商談の際、ジム代表に投げかけた言葉を思い出していた。
俺にとっては命懸けの貿易事業であっても、彼らにとってはそうではない。むしろ、そうであっては
(……いかんいかん。今更、弱気になるな)
「お問い合わせ頂きました、AIガゼルです。当艦は一分後にゲイル星系へ向け、ジャンプ航行に入ります。決して席を立たず、シートベルト着用のままで待機願います」
『……それが、お前さんの素か? ガゼルとやら』
ジム代表の反応は、探りとも
「粗暴を
『ははっ、それもそうか』
是と非ともとれないやりとりを経て、艦は跳躍に必要な暖気運転とエネルギー
「ハイパードライブ起動。……三、二、一、今!」
星系間跳躍航行が始まる。進路方向の星々が、
航宙母艦モリガンは、順調にゲイル星系へと突き進む。多大な
「跳躍解除用意……今! ゲイル星系へ到着を確認しました」
ゲイル星系の主星は、シリウスの如く青白かった。その星を最至近で仰ぎ見るように、艦を公転させた。ハイパードライブの逆噴射による
『商い方が
ジム代表が嘆息する。きっと彼らはこの航程を、何日もかけて航行しているのだろう。
「長きに
たまらずエシルが吹き出す。ここで無理矢理にでも、彼女の緊張を
「さぁさぁ、名残を惜しむ時間は無いぞ。商機を掴む、船出の用意はよろしいかな?」
『あ、ああ。……確認した、全員いけるぞ』
スカーが強引に促し、ジム代表が同行者の状態を確認する……まさにその時だった。
『船体黒色の大型母船! 直ちに停船せよ!』
警告音混じりの通信が、明らかにこちらを狙っていた。まずは、ここを上手く切り抜けねば。
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