第二三話 急報
***
エシルの独白を聴いて以来、俺は鬱々とした日々を送っていた。……その間に起きた出来事を
『前納分の互換部品を受領した。近々、通商護衛を依頼する。詳細は追って報せる。引き続き、よしなに』
パドゥキャレ
「
何故か俺は機械歩兵の中に収まり、ベルファと
「ほう……
「護身の
暫しの間、ベルファとの組手で眼を鍛えつつ、体術の経験知を積む。その様子を終始、興味深げに見つめていたスカーが印象的だ。……変なスイッチが入って無いことを願う。
後続の補給艦隊がロンドへ順次入港し、補給物資の積み込みを始める。その作業ぶりを、ディセアが単身で
エシルはあれ以来、
(……)
その原因を作ったのは俺だ。お気楽で無責任な
『かの脅威を以後、
ベルファによる訓練支援を受けた分、スカーはバッタ共の研究を推し進めるようだ。自分の城が壊される様を、繰り返し検分する作業は辛いだろう。
(……むしろ好都合か)
正直、人間としての心苦しさを持て余している。しかし俺のガワはAIガゼルだ。AIが管理者に悩みを打ち明けるなど、不審が過ぎる。管理者がAIガゼルの再起動やシステムチェックを行えば、そこに内包された俺は存在ごと抹消されるだろう。……ならば、ウジウジ悩む暇など無くしてしまおう。俺は機械歩兵を増産し、ロンドの巡察を開始した。
『補給完了。我、前線へと復帰す』
ディセアたちは補給艦隊を連れ、オールブへと出港した。その航程には、ゴード隊も同行させている。出港目前、静かに殺気立つ女王と参謀を目撃したという情報もある。ゴード隊の謹慎解除の際、
(それよりも……問題は第一四艦隊の動向だ)
そろそろディセアたちがオールブに到着するだろうか……そんなタイミングで急報が入る。
『未確認艦隊を観測。位置、ロンドから二七六〇光秒付近』
――一体、何があった!
報告のあった宙域を確認する。そこは、敵の遠征先と味方の現在位置との中間だった。とにかく、まずは現状把握だ。俺は艦隊に、臨戦態勢を取らせる。
☆
『AIガゼル、ノード〝アフィニティ#G〟に接続完了』
アフィニティ級巡航艦七番艦とリンクした。電子戦仕様で緊急出撃中だ。二〇分ほどの巡航を経て、当該宙域の近くへと到着する。
眼前にはリングを持つ惑星がある。リングは石と氷が
『巡航停止。
巡航状態のまま、一度アイドリングへ移行する。そのまま、周囲のノイズに聞き耳を立てた。
『
拾ったノイズを照会し、艦の配置を記録してゆく。
『未確認艦捕捉。……照会完了。工作艦、カリガ級、四』
記録を進めていくうちに、己の危機感が
『……艦隊識別完了。帝国軍第一四艦隊の可能性、極めて大』
俺が持つ情報を総合すると、この艦隊は第一四艦隊と観てほぼ間違い無さそうだ。しかし彼らの遠征先付近には、未だ多数の艦艇の反応を観測している。いきなり敵戦力が倍になり、そこが
帝国は謀略戦が主体と思える。星系間貿易による経済戦争、ディセアたちへの相続契約不履行、暗殺未遂が良い例だ。一方で、第九艦隊を破って以降、
(今の帝国軍は
(……これはまずい。スカーの判断を仰ごう)
俺は報告を急ぐ。艦はその場に留め、意識だけを彼女の元へ。
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