049-クズシダンへ

『こちら傭兵ギルド所属、アドアステラ。離星申請を申請したい』

『こちらバガンⅢ警備隊、申請を受諾した。...良い旅を!』

『ありがとう』


アドアステラはバガンⅢより離脱し、ワープ軌道へと入る。

すぐに光速へと達し、次のジャンプゲートを目指す。


「次のクズシダンへのゲートまでは40分だ、各自自由行動とする」


カルはブリッジを皆に任せ、自分は階下へと降りる。

そして、まずはその足で機関室へと向かった。


「一応繋げておかないとね」


そう言いつつ、機関室に積んである大型キャパシターバッテリーに、電力盤から配線を伸ばして繋げる。

これで、ブリッジからの直接操作で充填が開始できる。


「ハイパードライブは問題なしか」


冷却が完全に完了したのですぐにハイパースペースへと入ることができる。

その確認を終えたカルは、次は砲塔下のスペースへと移動し、砲台のメンテナンスを行う。


「何しろ、初めてのゼロ・セキュリティ宙域だからね...」


ゼロ・セキュリティとは、王国の支配すら及ばない危険宙域である。

この場合カルメナスに繋がっているらしいゲートのせいで、ロー・セキュリティ宙域のど真ん中にポツンと出来た海賊の駐留地帯であった。

カルメナスの海賊は、そこらの海賊とは全く違う。

練度も、艦船の質も。


「出来る限り調整しておかないと....」


カルは変調クリスタルの調整を行う。

少しでも削れていたり、劣化していると戦闘中に消滅したり破断する可能性があるからである。

すぐにリロードは出来るが、その時間がもったいないとカルは思っている。


「あー....やっぱり」


カルはヒビの入ったクリスタルを取り換え、砲台を上へと戻す。

それが終わると同時に、アドアステラはゲートの前にワープする。

ゲート周辺に展開する警備隊に見守られながら、アドアステラはロー・セキュリティ宙域であるクズシダンへとジャンプした。







ゲートの先には、何もいなかった。

当然ながら、ハイ・セキュリティ宙域に繋がるゲートでゲートキャンプをすれば、たちまち警備隊が飛んでくるからだ。


『艦長、ハイパードライブを起動しますか?』

「ああ、ハイパーインしろ!」

『了解、衝撃に備えてください!』


ブリッジからノルスの声が響き、直後廊下のあちこちから手摺が出てくる。

カルは手摺に掴まり、アドアステラが次元回廊内で安定するのを待った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る