048-不穏な気配

「ふぅー....」


アドアステラは、バガン行きのゲートを通過した。

ひたすらにしつこい海賊団との追いかけっこで、ほとんど眠れていない。


「.....まさか海賊があんなにしつこいなんて....」


サーマルステルスをする時間すら無かった。

地理で負けている以上、アステロイドに身を隠すのも難しい。

ロー・セキュリティ宙域にもステーションはあるが、基本的に海賊の仲間であることが多い。


『大丈夫かー?』


その時、通信が飛んできた。

ゲート付近にいた巡洋戦艦だ。

私はそれに応じる。


「....何の用だ?」

『いやぁ、随分やられたみたいだからな。ビギナーにはまだまだキツイぜ? この辺は』

「生憎、ビギナーではないんでな」


私はシルバーの認証信号を送信する。

すると、画面に映った男は肩を竦めて手をひらひらと振った。


『そりゃあ、悪かったよ。俺もまだシルバーでね.....』

「その割には、いい船に乗っているな?」

『親父の形見さ――――じゃあ、またいつか会おう』

「ああ」


アドアステラは通信が切れると同時にワープ態勢に入り、そのままバガンⅢへワープする。

何だったんだろう?

ワープから離脱し、惑星への降下軌道を取るアドアステラだったけれど、通信が飛んでくる。


『こちらバガンⅢ警備隊、貴艦の所属と降下の目的を明かせ。3分以内に応答がなかった場合撃墜する!』

「こちら傭兵ギルド『エンフォース』所属、アドアステラ。旅の継続のため、一時的に惑星に降下したい」

『確認した、シルバー傭兵だな? シルバー傭兵の海賊の可能性もあるので、主都への降下は許可できない。首都から300km離れたバガーニア4に降下せよ』

「了解した」


初めてのパターンだ。

しかし、海賊の領域と隣接している以上、これ以上ないくらいの対抗策だろう。


「聞いたな? 首都じゃないから治安は悪いし、外には出ない方がいい」

「「「「「了解!」」」」」


アドアステラは針路を変え、バガーニア4へと降下した。







「こりゃまた、チンケな場所だな」

『そう言いなさんなって、親分』


アルタナゲート、辺境宙域にて。

隠蔽されていたゲートが光を放ち、戦艦と巡洋艦3隻が姿を現した。


『”猟犬”が獲物を見つけたぜ、ライズコンソーシアムの”例のあれ”を積んでる。おまけに相当いい船だ』

「ほう.....これで俺も、支部長くらいにはなれるかね?」

『ああ...それに、親分の船なら楽勝さ....なんたって、ワープを妨害出来るんだからな!』


戦艦の旗艦で、男が笑う。


「フフフ.....まあ、油断はするな。バラク方面で、猟犬共がクソ強い船に襲われてるらしいからな」


艦隊は惑星へと回頭し、直後にワープして消えた。

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