シーズン2-旅立ち編
041-臨時収入
結論から言うと、商談は無事に成立した。
アルゴが運んできたものは、新開発のオービタルコア...惑星の衛星軌道上に構造物を係留するシステムの設計図であり、アルゴは無事に報酬に危険手当を上乗せした二千万MSCを受け取れたようだ。
そして、私は私で...
「〜♪」
「楽しそうだな、オイ」
別途五百万MSCを受け取った。
だいぶ多いが、今回の設計図は実際の価格に換算すると数百億MSCの価値があるらしく、それをさらに海賊の手に渡る事を防いでくれたので、これくらいは全く惜しくないそうだ。
そして。
「借金、頑張って返せよ。トイチだぞ」
「悪魔かよ」
アルゴの荷物の運搬費用と護衛代をツケておいた。
これで彼は、借金を返した後の無一文から稼がないと私への借金を返せない。
「まあいいさ、船さえ直れば...」
アルゴは物凄く辛そうな顔で言った。
まあ、よりにもよって私を呼んだのが間違いだったね。
臨時収入が入ったが、正直なところ使い道は特に無い。
アドアステラは単艦完結型で、ほぼ整備にお金を使わないからだ。
こうなると分かってたら、シトリンを買わなかったんだけどな...
「ただいまー」
「お帰りなさいませ、主人」
帰ると、ブリッジにはファイスしかいなかった。
ファイスは真面目なので、点検項目のチェック中だったようだ。
「機関部、パワー、ワープ、ハイパードライブに異常なしです。ワープコア波形に若干の乱れはありますが、マニュアル通り修正しておきました」
「ご苦労様」
艦内の様子をチェックすると、ノルスはデータ管理室でダウンロードデータの整理作業中、アリアは自室、ケインはトレーニングルームにいた。
「みんな仕事中か」
じゃあ私も仕事をしよう。
コンソールを操作して、アレンスターに通信を繋ぐ。
アレンスターは直ぐに出て、こっちに怒鳴ってきた。
『カル! 散々暴れてくれたな、いきなり出航するわ、海賊に追われながらブライトプライムⅣに降りるわ...俺がどれだけ始末書を書いたか!』
「悪い...その、友人が助けを求めていてな」
あの時、ジャミングをかけられていたアルゴの通信は、私の船の強力なセンサーブースターによって辛うじて拾われた。
私以外に助けられる人はいなかったのだ。
『はぁ...まあいい、運搬していた荷物はとても重要なものだったようだな、傭兵を守ってくれてありがとう』
「ああ」
アレンスターは長いため息をついて、その後感謝してきた。
彼も苦労してるんだろうな...
「そうだ、臨時収入が入ったから、俺の予算内でレストランに行かないか?」
『...本当か!?』
画面の向こうのアレンスターが凄い勢いで立ち上がった。
そんなに休む口実に飢えていたんだ...
『それは構わないが、俺の話も聞いてくれ。レストランの予算については、気にしなくて良い。お前と行ければ、どこでも良い』
「そうか」
私と面会したという事実が必要なんだね。
可哀想だし、そういう事にしてあげよう。
私は通信を切る。
「.....ホントに分かってるのかよ?」
画面の向こうで、アレンスターは溜息を吐いた。
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