040-望まぬ結末

アドアステラは海賊の艦隊に向けて突っ込む。


『あの船を落とせ!!』


そう命じたのは、海賊国家『カルメナス』から派遣された男。

ケチな傭兵が運ばされていた荷物は、最高機密の物品である。

奪うか破壊しろと、カルメナスの首領に命じられたのだ。


「敵艦の発砲を確認しました!」

「武装は....うーん、多分パルスレーザーと収束レーザーかな?」


対するアドアステラは、速度を落とすことなく海賊艦隊に突っ込んでいた。

シールドを強化する装備を積み込んでいるため、猛攻を受けてもシールドを貫通するには至っていなかった。


「主人、どうされるおつもりですか?」

「強行突破する!」

「はっ!」


ファイスの言葉にカルはただそう答え、ファイスはそれに従った。

そう、最初から真面目に相手する気などなかったのだ。

届けてしまえばそれで勝ちなのだから。


『ブライトプライムⅣ管理局、降下申請をしたい!』

『追われているようですが....?』

『頼む!』


カルは子爵の手形を出して、管理局に申請を飛ばす。

入星申請はあっけなく受諾され、カルはあとでアレンスターに謝らないとと思った。


『親分! あいつ星に!』

『絶対に渡すな! 全員不法入星だ! 大気圏で落とせ!』

『了解!!』


海賊たちは降下軌道へと入り、アドアステラを追う。

そんな彼らに、子爵軍から警告が入る。


『こちら入星管理局! 貴方達は入星を許可されていない! これ以上の接近は応戦対象と見做す!』

『るせぇバーカ!! こっちはクビが掛かってんだよ!』


クビとはそのままの意味である。

仕事に失敗すれば、命を以て償わなければならないのが、海賊国家カルメナスの掟である。

ステーションから警備隊が出撃し、後続の小型艦が攻撃を受ける。


『親分! やばいって!』

『そのまま死ね』

『た、助け――――』


後方で上がった爆炎を見つつ、リーダーは砲撃を続ける。

だが、アドアステラに張られたシールドは一向に破れる気配がない。


「ふうー.....航行系を全部シールドに割り振っておいてよかった....」


艦内では、カルが安堵のため息を吐いていた。

アドアステラの強みの速度を少しだけ殺し、防御にリソースを割り振っていたのだ。


「まだ追ってきますが....」

「どっちにしろ本社のある都市までは来れないよ」


都市に海賊が降りようとした瞬間、撃たれるのがおちだ。

アドアステラは悠々と降下を続け、ブライトプライムⅣの主要都市の上空へと出た。


「このまま一気に降りるぞ、衝撃備え!」


速度を落としつつ、アドアステラは都市へと降りていく。

だが、海賊艦の方も速度を上げ、アドアステラに近づいて来る。


「何をする気だ....?」

『ハッハァ!!』


体当たりする気だと、カルは気付いた。

このままだと都市にも被害が出る。


「.....ファイス、ノルス、指揮をお願い!」

「お任せください、主人」

「御主人、どうかご無事で」


カルは急いで甲板へと上がる。

シールドで守られているため、風などは心配しなくてもよく、カルは斜めになった甲板に立つ。


「(敵のスラスターを破壊して、都市の外周部に落とす――――)」


アドアステラについてきた海賊艦は六隻。

そして、カルセールの残弾も六発。


「相手にとって、申し分なし!! お兄ちゃん、私に加護を!」


カルセールを抜いたカルを見て、海賊たちは大爆笑した。


「おい、あいつ銃を抜いたぜ!?」

「あんなんで勝てるわけねーだろ!」


カルの仮面のサーモグラフィーが起動し、海賊船のエネルギー分布を映し出す。


「まずは――――一発!!」


カルが放った一発は、一部のブレもなく、一番手前の海賊船の右スラスターへと直撃し、弁が破壊されたことで、海賊船はルートを外れていく。


『あいつ、やりやがった!!』

「もう一発!!」


シリンダーが回転し、銃身にエネルギーが注ぎ込まれる。

カルは狙いを付け、もう一度撃つ。

その一撃はシールドを貫通し、再びスラスターの弁を破壊し、船の軌道を大きく逸らした。


「よし!」


カルがガッツポーズをしたとき、船の後部副砲が砲撃を放ち、残りの海賊船全てを光線で貫いた。

オーバークロックにより威力が増加していたのと、射程距離内であったためにシールドを易々と貫通したのだ。


『主人、済みました』

「ああ.....うん.....」


ファイスの撫でてほしそうな声を聞きながら、カルはホルスターにカルセールを仕舞った。

アドアステラは都市へと降りていく。

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