039-呉越同舟

アドアステラは、ハイパースペースを突っ切っていた。

カーゴスペースには、アルゴの船から移した私物と、積み荷が入っている。


「デカい船だな......疑って悪かったよ」

「俺もルーキーだからな、疑うのは仕方ない」


私はアルゴを艦内に入れる事に少し抵抗があったが、輸送で稼げるっぽいので黙っている。

何を積んでいるんだか知らないけれど、輸送先はブライトプライムⅣのディーライトコーポレーション。

真っ当な会社である。


「それにしても、何なんだこの空間?」

「ハイパードライブ航法だ、ワープの数百倍の速度で移動できる」

「....そうかよ、聞いたこともねえ技術だな...」


こうしていても仕方ないので、私はアルゴと一緒に食堂に向かう。

そこでは既に、ファイスが串焼きを食べていた。


「おや、主人」

「飯か....何から何まで、すまねえな」


アルゴは数日洗ってない犬の臭いがしたので、お風呂に入れて服も洗った。

それの事を言っているのだろう。


「大したレパートリーはないが、何か腹に入れておいた方がいい」

「.....お任せで」


今、お任せと言ったな?

私は嬉々として、何かの肉のトマト風ソース和えの缶詰を開け、皿に盛った。


「食え」

「おう」


私は私で、マスクの開閉機能で口部分だけ出してトマト風ジュースを飲む。


「マスクの下は見せてくれねーのかよ?」

「お前に見せる必要はない」

「そーかよ」


ちなみにこのジュース、一食分タイプもあり、今飲んでいるのはそれだ。

一食分のエネルギーを補給できる。


「お前って、どこから来たんだ?」

「俺もよく分からないな」


適当に誤魔化しておく。


『主人、後七分でハイパーアウトします』

「分かった!」


その時、ブリッジに戻ったらしいファイスから連絡があった。

私はアルゴに向かって振り返る。


「カーゴスペースに戻れ、追撃を受ける前に惑星に降下する」

「わーった」


アルゴは急いでカーゴスペースへと戻っていく。

私もブリッジへと上がる。

すると、全員が揃っていた。


「流石にシトリンはいないけどね」


まだブリッジに上げさせる訳にはいかない。

私は艦長席に座り、ハイパーアウトを待つ。

そして――――


「ハイパーアウト.....って!」


ハイパースペースを抜けたアドアステラの前には、とんでもない数の海賊船団が待ち受けていた。

確実に地方の雑魚海賊の規模じゃない。

アルゴ、本当に何を積んでるの.......?


「.....振り切るぞ、SWD起動!」


私は敵を振り切るべく、アドアステラを加速させるのだった。

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