025-ブライトエッジ子爵家

到着したら、衛兵のアンドロイドに止められた。


『これより先はお通しできません』

『強制進入された場合、星系軍に通達します』

「召喚命令を受けているんだが」


ホログラムでブライトエッジ子爵家の家紋を表示すると、アンドロイドの動きが硬直した。


『.....こんな得体の知れないやつが?』

『...実際呼ばれているらしい』


やはり、アンドロイドも人間っぽい感じなんだ。


『.....御通りください』

『連絡を入れておきますので、庭園を散歩中にお迎えがくるかと思われます』

「わかった」


門が開く。

まあ、門と言っても、シールド発生装置の穴みたいな感じなんだけど。

建造物にシールドを張る技術はまだ発展途中で、こういう場所にしか置いていないそうだ。


「.....広い」


そもそも子爵家自体が広いので、庭園をすっ飛ばして本館にお邪魔....とかはできない。

構造としては、

  空島

エレベーター

  本土ーーー庭園ーーー子爵家といった感じで、本土から海側に飛び出しているのが子爵家なのだ。

庭園だけで、トーキョーの半分くらいの面積だ。


「そもそも、植生が滅茶苦茶だ....」


庭園は、地域、環境、季節を問わない特徴を持つ植物が咲き乱れている。

遺伝子改造なのか、環境改造なのかは分からないが.....前世でこれを見たら、ちょっと気持ち悪かったかも。


『おーーーい!』

「!」


10分ほど歩き回っていると、上から声がした。

見上げると、白塗りの小型艇が見えた。


『今から降りるから、乗れ! 子爵邸まで案内する!』

「わかった!」


声の主は、アレンスターだった。

私は低空でホバリングした船に乗り込む。


「大きい家だな」

「広すぎてな、住んでくれないか? 一室くらい貸すぞ」

「勘弁してくれ」


冗談を言い合いながら、私たちは本邸へと向かう。

ガラスドームに覆われた本邸の前へと、小型艇は降り立つ、

科学的な都市とは違い、私の前世でも珍しいくらいの「洋館」だった。


「お帰りなさいませ、アレンスター様」

「ああ」


人間のメイドに迎えられ、私たちは洋館の入り口のアーケードを通る。


「貴族っていうのは、皆こういう家に?」

「いいや? ブライトプライムは確かにこうだが、他は惑星そのものを屋敷にしている場所もあるぞ」

「.......維持管理が大変そうだな」

「そこを人間で補うのが、豊かさの示威高位ってわけだ」


ウチは金がないから、本館の維持だけで手一杯だけどな、とアレンスターは笑う。


「金がないのに、警察なんかやってるのか?」

「おいおい、なんかとは何だ....まぁ、俺のポケットマネーを趣味に使うわけにはいかないんでな」


このくされ警察官、意外とまともだった。

私たちは重厚な扉を潜り、屋敷の中へと入る。


「.......」


大広間に階段があり二階の通路に分岐していて、そこに誰かの似顔絵が飾ってあった。


「あれは、誰の似顔絵なんだ?」

「........まあ、それはいいだろ。こっちが客間だ」


意図的に避けたね。

まあ、詮索する理由もない。

私は、黙ってアレンスターに続く。


「いいか、俺の親父は馬鹿だが」

「.......」

「...馬鹿だが、利には敏い。目を付けられたくなければ、あの船についてはなるべく伏せろ」

「ああ、分かった」


若干の気まずさを抱えつつ、私たちは客間へと向かった。

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