024-衣装を揃えて

こうして、そこそこ長い旅路を終えアドアステラはブライトプライムⅠへと到着した。


『こちら、ブライトプライムⅠ入星管理局、諸君の船が降下軌道に入ったのを確認した。入星目的と所属を明かせ』

「こちら傭兵ギルド所属、カル・クロカワだ、ブライトエッジ子爵より召喚命令を受けたため、本星に効果を希望する!」

『データベースを確認する.......照合した、ブライトプライムへようこそ!』


特に審査もなく......そもそもカーゴスキャナーを掛けられていたので、積み荷をごまかすことはできないが.....私はブライトプライムへと降下した。

アドアステラは大気圏内でも普通に維持できる船なので、その辺の心配は不要だ。


「御主人、外が燃えております」

「大丈夫だ、気にするほどの事ではない」


宇宙で暮らしている以上、大気圏突入の経験はないだろう。

私は若干怯え気味の船員たちの視線を受けながら、脳内のお兄ちゃんエミュレーターを起動する。


「ただ燃えているだけだ、シールドの残存値を見ろ、1%でも減少しているか? 視覚による情報より、ただ画面を見ればいい。目で見るのは俺の仕事だ」

「「「「はい!!」」」」


雲のある場所まで突っ切ったアドアステラは、空中で減速する。


「ここからが科学技術の凄いところだな」


私は呟く。

雲間を抜け、低空の雲海へと飛び出すと、多数の宇宙船が行き交っていた。


「雲の上に街があるのですか....!?」

「その通り」


正確に言えば、ここはブライトプライムⅠの出島のようなもの。

地上に降りるためには、ここを介さないと子爵軍に攻撃される。

逆に言えば、地上の民はここを通らないと逃げられないので、治安はすごくいい。

アドアステラは誘導ビーコンに従い、格納庫向けて降下していく。

格納庫の使用料はただ同然だったが、毎日徴収されるのでちりつもだ。


「ノルス、ファイス、私の外出中に人が来たら、ケインとアリアをトレーニングルームに行かせて、カーゴスペースを見せてあげて」

「ハッ!」

「お任せください」


私は船に積まれていた小型艇に乗り込み、空港を後にする。

そして、中央の巨大エレベーターの順番待ちの列に入った。

上からは審査なしみたいで、下からは審査ありらしい。

スキャナーで爆薬の類はチェックされてるしね。




下に出ると、あとは目的地を入力するだけだった。

都市を管理するシステムが、歩行者と車両・艦艇が衝突しないよう調整するのだ。

便利だなぁ。


「今日訪れると連絡はしてあるが、大丈夫だろうか」


門前払いだけは嫌だな。

とはいえ、まずは着替えを取りに行かないと。

私は、目的地を高級服屋に合わせる。


「...それにしても、凄い街だな」


未来都市などというレベルではない。

巨大な建造物が秩序立って並び、多くの人間が徒歩なり車両なりで行き交っている。

カフェのようなものはなく、スタンドから飲み物を飲んでいる人が多い。


「着いたか」


着いたので、私は停止スペースに船を置くと、店へと入った。

すると同時に、上品仕様のアンドロイドが出てきた。


『誠に申し訳ございませんが、当店は紹介が必須となっておりまして...』

「予約の品を受け取りに来た」


私が受け取りコードを提示すると、アンドロイドは恭しく礼をした。

奥へと案内された私は、別の大型アンドロイドにアンドロイドが指示を出すのを見た。


『こちらでお待ちください』

「ああ」


椅子に座ると机の一部がへこみ、お茶が出てきた。

どうせアンドロイドしかいないので仮面を外して飲む。

..........


「.....................」


..................ごめん。

文化の違いというか、高級茶の趣向が全然違った。

これまで飲んだことのない味だったという事だけ、言っておく。


『お待たせしました、カーゴスペースまでお持ちしましょうか?』

「頼む」


私たちはストリートに出て、服の入ったコンテナを小型艇に積み込んでもらう。


『ご利用、ありがとうございました』

「ああ」


私は早速船内で着替える。

礼装用だけど、革製っぽい質感のわりに涼しい。

冷暖房機能があるのだろう。

着替えが終わったら、目的地を子爵家正門に変更し小型艇を走らせた。

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