023-セクハラ
『ありがとうございます、あなたが居なければ....』
「そういうのはいい、報酬は?」
数時間後。
私は船団の救助を手伝いながら、報酬の交渉を行っていた。
ぶっちゃけ生存者なんてどうでもいいけど、お兄ちゃんが「生存者がいたら助けると報酬額上がるぞ」って言っていたのでやっている。
『........我々だけでは決められません。しかしながら、救助までしていただいた以上、通常の報酬額で収めるわけにはいきませんな.....』
「確か、そちらの艦隊はライズコンソーシアムの直営だったな? なら、後で窺う際に依頼を斡旋してくれないか?」
『....我々にはどちらにしろ決定権がありません、連絡先を共有しますので、後々連絡しますよ』
「ああ」
ライズコンソーシアムは、ステーションやコロニーといった建造物の設計・構築を手掛ける企業だ。
一応船の設計も手掛けてはいるが、少なくとも依頼には事欠かないだろう。
私は救助が終わった船が、順番にワープしていくのを見届ける。
「御主人、何故ワープ中の船は捕まえられるのですか?」
「この船とはワープの仕組みが違うみたいだからな....」
原始的なワープ技術で、FTLに近いワープ技術の為、インターディクターによる妨害を受けやすいのだ。
この宇宙では、ワープ技術はまだ若い技術らしい。
アドアステラがおかしいんだと、たまに納得させられる。
「さぁ、俺たちもブライトプライムへ向かおう」
「了解です」
アドアステラはドローンを収納し、ワープドライブを起動してワープ状態に入った。
「所要時間は?」
「主人、8時間後に到着するようです」
8時間後か。
なら一眠りする時間はあるかな。
「それから、主人...前にも言ったと思うのですが、カーゴスペースに見慣れぬ荷物が置かれております」
「...あ、済まない」
すっかり忘れていた。
私はエレベーターで貨物室まで降りて、謎の荷物の正体を確かめに行く。
「目立つなぁ」
白いカーゴコンテナの中に混じって、一つ無駄に凝った赤いコンテナがあった。
血のような赤ということで、呪いの物品を警戒しつつ開封する。
「...これは」
たった一つのデータメモリと、ちょっと文章には書きたくないものが入っていた。
そりゃ、女性には必須だけど。
データメモリを苛立ち気味に読み込むと、メッセージと共に3万MSCが入ってきた。
『俺だ。海賊の件は助かった、報酬は出たと思うんだが、これは俺からの個人報酬って奴だ。これで××××でも買ってくれ』
「......」
『それから、気絶している間に色々測らせてもらった、ブライトプライムにある店でそれぞれ用立ててやったから、共有した交換コードで貰ってくれ』
「......この」
どこまでも、人がドン引きすることを...
「くされ警察官がっ!」
役目を終えたデータメモリを床に叩きつける。
いくら男装してるからって、言っていいことと悪いことがある。
お兄ちゃんに言いつけるぞ、このくされ貴族。
「とはいえ、貰えるものは貰っておくか」
あの頭がクルクルパーのアホ貴族がお兄ちゃんも知らない私のパーソナルデータを計測して作ったものは、意外な物だった。
まず、今つけている仮面以外の服。
有り合わせで体を覆って女とバレないようにしているけれど、それのフルセットを三種類用意してくれたようだ。
戦闘用のぴっちりスーツ版、正装用の黒マント風、普段着の動きやすいバージョン。
次に、武器。
これはまぁシンプルに、ハンドガンタイプのレーザーガン。
私は特段銃の扱いに長けているわけではないので、要練習だ。
最後に、下着セット1週間分。
「(ビキッ)」
やっぱり殺そう。
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