009-くされ警官
「...わ、わかった」
動揺したことを恥じたのか、アレンスターが顔を赤く染める。
そしてすぐに、頭をぼりぼりと掻いて言った。
「......わかった、顔も見えたことだ。レッジ、こいつの仮身分証明書を作成しろ」
「はっ」
レッジと呼ばれた男が、奥の方に消えていく。
「いいのか?」
「もとより、帝国に籍を持っていない不法滞在者や、未登録の犯罪者や元奴隷に対する措置だ、何も特別な事ではない」
それもそうか。
「お前は俺たちに不正をしろ、と提案したわけだ。そして俺たちは不真面目な地方警官なんでな、適切な見返りがあれば聞いてやってもいいんだが」
「見返りとは?」
「俺たちに協力してくれないか? なに、一生ってわけじゃない。ほんの数ヶ月ほど、海賊の殲滅に付き合ってほしい」
「...初心者ミッションか」
「?」
「気にしないでくれ」
海賊の殲滅を手伝え、というのはSNOの「傭兵」の初心者ミッションだ。
今になってそれを受けるなんて、お兄ちゃんに爆笑されるかもしれない。
「で、答えは?」
「手伝おう」
「そりゃ良かった」
調子のいい人だな...
お兄ちゃんが嫌いそうなタイプだけど、それでもお兄ちゃんはこういう人を懐柔するのが上手い。
「選択肢のない選択を迫るとは、人の悪い警官だな?」
「悔しいが、俺たちの装備では殲滅は困難でな。お前の強力な兵器――――出元は訊かないが、それを借りたい」
「........」
あの程度の武装が強力とは、相当貧弱な武装のようだ。
「上は?」
「俺たちの技量が低いんだとさ、まあ辺境の話だ。」
「そうか」
どんな武装かは知らないが、巡洋艦に苦戦するなら大した武装ではないんだと思う。
「どんな武装なんだ?」
「三連エントロピー減少集束パルスレーザー砲塔だ、帝国国内の民間船はこれを装備していることが多いな」
「国際警察なら、強い武装を持っていてもおかしくないようには思えるが」
「くされ警官も多いんでな、領主と結託する奴も多い。機密を敵に渡すわけにもいかないんで、中央の精鋭以外は持ってねえのさ」
「くされ警官か....まさにお前のような?」
「そうだな、ハハハ!」
話の通じる警官で良かった。
私は再びマスクを装着して、言った。
「では、宇宙に出ようか?」
「よし来た」
そのためには、まず船を取り返す必要がある。
TRINITY.の船はステーションの周囲を旋回していたが、進路を変えてステーションへと動き始めるのであった。
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