シーズン2-エミド再侵攻

041-エミド侵入

エミド接近。

その知らせが、哨戒中のポラノルから齎された。


『ナクート星系にエミドがワームホールを通って侵入しましたよぉ。今は基地を建設中ですね、15時間以内に完成するかと。基地の機能アクティブ化は4日後との予想です!』


基地が出来たとしても、ニューエンドで吹き飛ばせばいいと短絡的に考えていたのだが、今回はそうもいかないらしい。


『敵はシールドトランサーアレイを使用しています。つまり、我々の設備からサルベージした技術ですから、破るのは普通より難しいと思われますね』


ケルビスが言う。

エミドがこちらの技術をパク...転用していたのには驚いたが、彼らにも技術を発展させる力があるということだ。

シールドトランサーアレイとは、遠隔地からシールドを補給する手段であり、本星か別のどこからかシールドを補強しているのだという。


「恐らく、ニューエンドを一撃耐え切るくらいはするでしょう。エミドの主武装は...」


隣にいるカサンドラが発言するが、僕はそれを手で制する。

その情報は知っている。

エミド艦船に搭載されている武装は通常のものとは大きく違い、パーティクルオシレーションディケイ...つまり素粒子揺動崩壊波を放つ装置となっている。

物質を構成する素粒子に働きかけて、その組成を崩して徐々に破壊していく兵器だ。

エリスの惑星の戦力がエミドに勝てなかったのも納得だ。

こんなもの、今の宇宙の技術力で敵う相手ではない。


「エミドの主武装が届く距離に到達されれば、Ve‘z艦船でも撃墜の危険性がある」

『ではやはり、今回も遠距離からですか?』

「いや、今回はアドラスを旗艦とする」


アドラスを旗艦とし、前に出す事で敵の注意を引き、アドラスの持つ超高速修復能力でダメージをカバー、あとはアドラスの隠し玉の射程まで入ることができれば勝ちだ。

...アドラスの必殺兵器を見てみたいという気持ちもある。


『成程、素晴らしいお考えです』


ケルビスはそう言って褒めてくれるが、その頭脳の内部では高速で処理が行われているのだろう。

僕が何故それを提案したのか、それが何を引き起こすのか。

例え僕が間違っていても、ケルビスの超越的な演算による思考の暴走によって、「ありもしない真意」に気付いてしまうのだ。


『アドラスを前面に出す事で、エミドは長距離兵器を警戒して攻撃を行うでしょう、しかし! それこそがエリアス様の作戦の本懐! シールド転送装置を守る敵の眼前で、敵要塞のオービタルコアを破壊して作戦を頓挫させるつもりなのですね!』

「あ、ああ...概ねそうだ」


そうか、要塞の建造を止めたいだけなら、オービタルコアを破壊すればいいのか。

その後の侵攻を食い止めるのは、要塞を建造しようとする船を撃っていくだけでよい。


『......エリアス様には遠く及びませんが、エリアス様も素晴らしい判断をなされますな』


そう言ったのはグレゴルだ。

僕の事を徹底的に認めないこのAIが評価したということは、エリアスでも同じような判断をしたのだろうか?

いいや、それは多分違う。

エリアスなら、失う事を恐れない戦い方をするだろう。

そう思った。

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