024-”願望”

『ならば、私ならいいのか?』


そう言った私の目は、赤く輝いている。

本来の虹色ではなく、赤に。


『........分かりました、墓標のロックを解除します』

『では、会議を終了します』


通信が切断され、私は目を閉じる。

目を閉じて開けると、目の色は元に戻っていた。


「..............こんな事だったなんて、な」


さっきのは何だったのか、僕はもう一度目を閉じる。

だが、アクセスが弾かれる。

「彼女」が拒否しているのだ。


「.....エリアス、僕が望んだから、彼らはそうなったんだな」


真相はそういう事だった。

全ては、僕が望んだこと。

個性らしくあれと、僕が彼らに望んだからこそ、エクスティラノスたちは人格を持つ事が出来た。

だが、「彼女」の制御下であれば、AI達は無機質な機械へと戻る。

グレゴルは、「僕」の制御下においては、決して僕の命令を聞かない。

だけど、「彼女」.........エリアス=アルティノスの前であれば。

彼は「私」の言う事を聞かざるを得ない。


「........」

『どうかされましたか、エリアス様?』


その時、カサンドラが話しかけてくる。

ふと気になって、もう一度目を閉じる。

視界は灰色になり、カサンドラはより冷たく映る。

口は僕の意思に反して言葉を紡ぐ。


「問題ない。例外処理は100%カバーされている」

『.......』


カサンドラは何も言わない。

頭にただ、「了解」というメッセージが伝わって来る。

信じていたつもりだったのだが、そうではなかった。

全てはただ。

僕が命じていたことだった。


「あ、」

「......エリス」


その時、廊下を走ってきたエリスが、僕に抱き着いて来る。


「聞いてっ、ジェネラスが急に変な感じになって.....」

「......お前は」


お前だけは、違うよな。

そう思うと、急に心が軽くなった。

僕は、眼鏡を一つかければ様相の代わる城にいるだけだ。

エリスがいるのなら、それで充分だ。


「少しシステムメンテナンスを行ってな、AIの様子がおかしくなったのはそのせいだ」

「そうなのね......でも、エリアスは確か、AIじゃないのよね?」

「......ああ。僕は人間だからね」


だが、一つだけ分からないことがある。

どうしてエリアスは。

前の僕は、僕を呼んだのだろうか?

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