023-紅い瞳
また更に数日後。
僕はエリスを除く全員と、通信による会議を行っていた。
まだ帰れていないエクスティラノス三体も、通信に参加している。
今僕の目に映っている仮想会議室には、自分で作り出したものだ。
前は直接脳内に聞こえていたが、流石に声だけだと分かりにくかったのだ。
『今回の議題は、資材の不足についてだ』
『恐れながらエリアス様、星を占拠すれば資材を自在に確保可能かと』
カサンドラの義体がトレースされたモデルが、恭しく跪いて発言する。
それを聞いた瞬間に、ジェネラスが左の手のひらを、ケルビスが大きく手を挙げて発言の許可を申請してくる。
一旦カサンドラを黙らせて、二人の意見を順番に聞く。
『拙者は賛成です、しかしながら、原住生物の排除は拙者にお任せください。強き者が居れば、解析し、キジラのAIの向上に務めたいのです』
『私めは反対です。我々に与えられた最初の指令とは、集結しこの首都を復興すること。下手に人間と接触するような事態になれば、襲い来る全てを焼き払わねばならないでしょう?』
「..........」
僕は考える。
となると、資材を調達する惑星は慎重に選ばないといけない。
『お待ちください』
その時、シーシャが声を上げる。
僕が話すように促すと、彼女は僕の方に情報を送ってきた。
『なんだ?』
『我々Ve’zは、大栄華の時代に複数の惑星を、このヴェリアノスに収容していました。美しいと判断した星の時間を停止させ、永遠に維持するシステムは現在も働いています』
『.....待てい!』
その時、威厳ある声が響いた。
全員がそちらを見ると、グレゴル=エクスティラノスがそこにいた。
『グレゴルッ、真っ先に離反した君が何か言う権利はない!』
『待て、ケルビス』
ケルビスが僕の前で声を荒げる。
エリアスの記憶を含めて一度もなかったことだ。
僕はそれを制止し、グレゴルに向き合う。
『.......私はグレゴル=エクスティラノス。しかし、私の忠義はあなたと、過去の貴女にあります。過去の貴女はあれらの星々を永久に遺せとおっしゃいました、貴女は何故、自分に嘘を吐くのですか!』
『ッ.......!』
それを言われた瞬間、会議室全体にノイズが走る。
周囲の声が、うまく聞こえない。
『.........ぜ.........生き..........?』
「おま.....えは.....誰だ!」
その瞬間、ノイズは消え去った。
澄んだ声で、直接耳に声が響いた。
『........お前には未来を変える権利がある。権利ではない、義務だ、呪いを、解け』
「..............」
僕は黙ったまま会議に再接続する。
そして、グレゴルに面と向かう。
『グレゴル、お前は何のために生み出された?』
『.........過去の罪を管理する、墓守です』
『罪? 罪といったな?』
僕はグレゴルに詰め寄る。
それを、配下たちがじっと見つめる。
『お前は何故それを罪と断じる?』
『.....貴女様がそう仰ったのです』
『ならば、僕が今それを”赦す”といえばそれは無かったことになるか?』
『い、いえ.......それは過去の貴女の.....』
そうか。
そんなに過去のエリアスが......大切か。
僕は目を閉じ、もう一度目を開ける。
『ならば、私なら良いのか?』
その途端、会議室は消え去り、コアブロックが私の視界に映る。
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