135-A.O.I

『こちらコマンダー。全体に通達。ルルの慈悲により、戦闘員だけの殲滅に留める事にした。開戦の一発はマルクトに行わせる』

「了解!」


ラムブレードに乗り、指揮を執っていたネムは、それに頷いた。

直後、空を割いて一発のミサイルが墜ちてきた。


「なんだ、あれは?」

「爆弾か?」

「はっ、あの程度の爆弾で何ができる?」


それは、不格好なパイロンを上下逆さまにして、円筒状のアクリルに蓋をした形をしていた。

アクリルの中には装置があり、その中では紫色の光が輝いていた。


「撃ち落とせ!」


竜たちは、一斉に衝撃波でそれを攻撃した。

だが、シールドを持つそれを破壊することはできない。

そして、


『臨界』


通信回線に、声が響いた。

その声が響いたすぐ後に、それは輝きを発する。

太陽の如き輝きを。


AArrowOOfIIndra、臨界率95%を超過。シールド出力を低下させます』


そして、完全臨界に達したAOIが、起爆した。

ケースとシールドを火球が呑み込み吹き飛ばす。


「こ、これは――――」

「神の火を、操るか......!?」


膨れ上がった火球は、竜族の群れを飲み込む。

それにより、長と呼ばれる竜族は巻き込まれ、蒸発した。


「これは.........!?」

『Arrow Of Indra.......ビージアイナ帝国の残党が使用していたヴァルチェーライナ.....破滅の光を、再利用及びアップグレードしたものだ』


シンの声が響く。


『帝国の各地で採取可能な特殊鉱物、『ビルジアイニウム』は、各種金属を組み合わせ『ビルジース合金』に加工し『RO-P2』ガスと接触させることにより、急速に反応を起こす事が出来る』

『反応は現状の威力では、主力艦級のシールドと装甲を完全に蒸発可能です。反応から5.11秒程度で最大半径200km以内に火球を生成します』

『知るがいい、トカゲ共』


シンの通信の声は、少し震えていた。

ネムは知っていた。

怒っているのだ、彼は。


『俺は神ではない。しかし――――軍団を統べる、王だ! 行け、天空騎士団!』


直後、展開していた編隊が一斉に群れに飛び込んでいく。


「鉄の鳥が来るぞ!」

「撃ち落とせ!」


だが、無駄だ。

シールドに守られた艦載機を、撃ち落とせる訳がない。


『よくも、俺たちの国を襲ってくれたな!』

『ティファナ様を殴った罪! 臓物撒き散らして死ねえぇえ!!』


竜族は二万、天空騎士団は500弱。

だが、有機生命体では、軽戦闘機には通用しない。

空に、紅い花が咲く。


「光の矢? 爆弾? そんなもの、避ければ......!」

『第八編隊、キルゾーンより離脱』

『第六編隊、クラスターミサイルを一斉発射、軸線に合わせなさい』

『了解!!』

『第二編隊、キルゾーンより離脱』

『第一編隊、ガスミサイル発射!』

『了解!』

『第七編隊、キルゾーンより離脱』

『第十一編隊、固定型ナパーム弾頭発射!』


竜族たちは必死に抵抗したが、天空騎士団は”地球では”国際的に使用が禁じられている兵器を、天空騎士団は一斉に使用していた。


『司令官、ルル様が死んでいたらの話ではなかったのですか?』

『お前はハエの掃除にいちいち手で叩いて対処するのか?』


内部に仕込まれた爆弾は、破片手榴弾と同じ構造を持つクラスターミサイル。

神経に作用し、大量に吸引すれば全身が麻痺し、心臓が止まって即死するガスミサイル。

半径45kmのシールドを展開し、内部の空間に燃料を拡散させ、酸素が完全に消失するまで焼き払う固定型ナパーム弾頭。


『”ワームⅡ”も考えていたが、これだけでも十分強力だな』

『そのようですね』

『......ところで、シン司令官』


その時。

通信回線に、ネムの声が入った。


『いま、どこにいるんですか? お城にはいませんよね?』

『ああ――――』


シンは言葉を切る。

彼は、獣人国の城壁の前に立っていた。

草原を吹き抜ける風が、彼の背広を揺らす。


「獣人国の前だ、いい景色だぞ」

『ええっ!?』


彼の前には、竜族の群れがあった。

本隊から分かれ、獣人国を襲撃するために来ていたのだ。


「さあ――――卑怯者どもに、鉄槌を下そう」


シンはそう言って、笑った。

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