133-禁忌の火
「さあ、作戦会議の始まりだな」
『はい』
今回作戦に参加するのは、俺一人だけだ。
一応ブリッジにケセドとゲブラーを乗せてはいるが。
他の面々は、救出後の総攻撃作戦に参加するという訳で、この場にいる。
「今回。ルルは”竜山脈”の最下層にいる。だから、秘密作戦艦で地下に侵入し、俺がルルを奪還する」
「.......一人で、ですか?」
「一人で、だ。これは、必要な事だからな」
俺はこの作戦の重要性を理解している。
指揮はネムに預け、俺自身がルルを迎えに行く。
それこそが、最重要事項なのだ。
「危険です」
「そうです、危険です、司令官」
「......済まない」
ルルはきっと、助けに来ない俺を疑っているだろう。
だから、俺は父として。夫として。
彼女を一人で迎えに行かなければならない。
「それに」
俺は背後を見上げる。
「頼もしい護衛はいるんだよな、任せた、ゲブラー、ケセド」
「命に代えても守り抜いてください!」
彼らに命はないが、ゲブラーとケセドは死力を尽くすだろう。
俺にはそんな確信があった。
彼らの中にある弱い自我が、それでも俺を守ると誓ったのならな。
「アインス、まだ完成はしていないが――――タウミエルでの出撃を許可する」
「イエッサー!」
「ツヴァイ、ルルがいない以上、現地の戦闘機隊の指揮はお前が行え」
「イエス、マイマスター」
そして最後に、俺はナージャを見る。
「どうして俺に、アザトースを託した?」
『パフェ 供給源へ 的確な利益供与』
「それは”建前”だろう?」
『..........これは ルール違反 しかし――――自分がそうしたいと 思った』
「....そうか」
俺は制帽を被りなおした。
「ディーヴァ。俺たちは禁断のメギドの火を手にした。ビージアイナ帝国ですら量産できなかったその力を、お前に預ける」
『......受領したのじゃ』
あの超主力艦が使っていた兵器を、俺たちは解析の末に手に入れた。
それは、たった一個で山脈を吹き飛ばし、そこに芽吹く命を嘲笑し蹂躙する恐るべき兵器だ。
俺はそれを振るう事に躊躇はない、だからこそそれが怖い。
多少俺に懐いているとはいえ、比較的常識を持つディーヴァにそれを預ける事にする。
「一匹は生かしておきたいな、遺伝子サンプルがあれば量産できる」
『司令官、倫理というものは....』
「人間に作られた人間のお前が、それを問うか?」
俺は笑う。
オーロラが人に倫理を問う、それこそ矛盾だ。
『司令官、私は....』
「お前は人間だ。俺はそれを認める。行こうぜ、倫理観0の司令官とAIだ」
『はい』
俺は全員を再度見下ろす。
「最悪一人残せばいい、ルルをさらった極悪人共を、一人残らず消し飛ばせ!」
俺は全員の目を睥睨して、そう叫んだ。
皆、それに静かに頷いたのであった。
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