130-生き物なら死ぬな!
そして、綿密な調査の結果、誘拐犯どもの正体が判明した。
捕獲した個体を衰弱死するまで分析した結果、竜人であるとの結論を得た。
『普段は人型で生活をしており、飛行する際に骨格そのものが変化、竜の形になり、腹部に急速に吸い込んだ空気を高速噴射して加速し、翼でグライダーのように滑空する生物です』
「攻撃手段は?」
『超音波です。シールドを持たないものに対してはかなり有効だと思われます』
奴らが調子に乗るのも理解できる。
これらの力は、この星の生物では到底対抗できないものだ。
「だが、毒ガスや通常兵器が効くのは良かったな」
『そうですね』
被験体に呼吸器系や神経ガスを吸わせて実験したり、その度にナノマシン治療を施して、兵器の的にしてみたりしたのだが、鱗部分は実体弾に耐えるものの、翼部分は脆弱だと分かった。
レーザー兵器には耐えられず、ミサイルでは即死してしまった。
「それで、敵の領域について聞こうか」
『はい。敵の領域は、獣人国南西部に存在する大山脈であり、この場所に無数のコロニーが存在しています』
「ルルはどこに?」
『この中で一番巨大な巣穴の奥底にある場所に閉じ込められているようです。しかし...彼女を助けるためには、その前提である巣穴の突破が必要です。攻略中に人質を殺される危険性もあります』
「そうなんだよな...」
軌道爆撃も難しい。
どうしたものか...
「制圧は何分程度で終わる?」
『40分は掛かるかと思われます』
その間に間違いなく殺されるな...
愚か者の取る選択肢など、高が知れているのだから。
俺は冷静に、取れる策を考えるのであった。
「おい、起きろ」
「ん...」
ルルは誰かに揺り起こされる。
目を開けると、岩の天井が映った。
「...ここは?」
「牢獄だ」
「っ!?」
ルルはその人物を視認して、驚いた。
顔自体はありふれた女性のものだが、頭に角がある。
「あ、悪魔...?」
「違う。私は竜族だ!」
「竜...?」
「そう、偉大なる空の帝王、竜族だ」
ルルはその言葉を聞いて、一瞬呆然とした。
空の帝王という称号が、あまりにちっぽけに感じたからである。
「恐ろしいか?」
「いいえ?」
「なぜだ? われらが恐ろしくて当然ではないか」
「あら。私は星空の王の妻ですから。空の帝王なんて、大した事ないと思いますよ」
「何っ!? ...いや、そうだな...オレは女だから...帝王は変なのか?」
見当違いな方向に悩み始めた女性を前にして、ルルは困惑した。
「...とにかく、飯を持ってきた。お父様たちはお前を餓死させる気だが、オレはそんなのは竜族のする事じゃないと思ってる」
「あなたの名前は...?」
「オレはカレン。カレン・マイネ・シュドラグ...お前は?」
「ルル」
こうして、二人は出逢ったのであった。
ちなみに、竜族基準の固さのパンをルルが食べられなかった事で、カレンが苦心するのはまた別の話。
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