117-終焉の艦
「それでは、ディーヴァ様。行って参ります」
「うむ、任せたぞ」
ディーヴァは、貼り付けた笑顔で将軍たちを見送った。
場所は帝城地下。
ディーヴァが先代より、『帝国終わりに瀕するとき、これを以て敵の首魁を討ち取るがいい』と教わった兵器が眠っているのだ。
勿論ディーヴァは、それに乗る気はない。
ノーザン・ライツをこの手で討ち取り、戦いを終わらせるために。
「......どうか、お気を付けを」
ヴィッピスがディーヴァの身を案じる。
二日前、首都が制圧された直後に、敵の基地らしき物体が落下してきており、全ての戦闘ボットはそこに集っているのだ。
「心配はいらぬ」
死ぬのはお前たちだけだ.....そう言外に込めて、ディーヴァは笑った。
それは悪魔に魂を売った者の笑みだった。
「帝国のために尽くせ」
「はっ」
ヴィッピス達は、エレベーターに乗る。
より深くに存在する、兵器へと乗り込むのだ。
その後兵器は、秘密裏に発進しワープする。
ナータリアへと。
そして、挟み撃ちを仕掛けるのだ。
『司令官、何故ナータリアに艦隊を駐留させたのですか?』
「敵にとって、現在ビルジースプライムに展開しているうちの艦隊は格好の餌だ――――何か、隠し持っているならな」
俺はそう判断した。
何故なら、帝国軍の上層部は、最後まで余裕のある作戦を展開していた。
それに、俺の答えは――――騙されんぞ。だ。
どんなに余裕な戦いを行ったとして、最後にはホールドスターの前に強敵が現れて――――
『.....司令官の予想通りですね。ナータリアゲートに、未知の艦影が出現』
「だろ?」
艦影が、戦闘指揮所のスクリーンに映る。
大きさは、主力艦の五倍くらいか?
かなり大きい上、内部の人数も尋常ではない。
『Noa-Tun連邦に命じる。直ちに撤退せよ。これが我がビージアイナ帝国の最終兵器、ビルジアイナディート! 諸君らに勝ち目は最早ない!』
「マジで言ってるのか??」
『司令官、素が出てますよ』
「あ、ああ」
俺は冷静さを取り戻し、命じる。
「全艦マルチ隊形! 最終兵器を「ブライトジャベリン」に切り替え!」
『切り替え完了。エネルギー充填開始』
ゲート前に展開した20隻の主力艦隊が、一斉に最終兵器を充填する。
本来六発あれば
『刮目せよ! 太陽の栄光を!!』
「...何だ!?」
直後。
ビルジアイナディートと呼ばれた艦の、先端部の根元が開く。
そして、青白い光が主力艦隊に向けて放たれた。
『.......主力艦隊全体のキャパシターが大きく減衰!』
「キャパシタバニッシャーか...!」
まずいな。
電力がなくなれば、主力艦隊はでくの坊同然だ。
「全主力艦、フィラメントワープ!」
『フィラメント燃焼開始』
ワープに時間がかかるのが主力艦の難点だが、妨害フィールド内でなければ即座にクロトザク式のフィラメント燃焼ワープで離脱できる。
「要撃艦隊、二分隊に別れて出撃! 遠距離艦隊も出撃せよ! TRILL-HEIM、妨害レンジエンハンサー起動! 奴にワープ妨害を掛けろ!」
『了解』
『シン様、私たちも.....』
「ああ! 天空騎士団、全機発進準備! 出撃のタイミングは俺が指示する!」
『...はい!』
俺が交戦する艦隊を見ていた時、アインスから通信が入る。
「どうした?」
『開発中のプロトタイプで、戦場に出てもよろしいでしょうか?』
「ダメだ。お前は俺の配下で、くだらないことで死ぬのは許されない」
『イエス、サー!』
大体あのプロトタイプは、特殊機構がまだ完成していない。
あれがなければ通常の軽戦闘機とそう変わらないうえ、機動性も攻撃力も一段階劣る。
「いいか、俺はお前を戦力として期待しているが、同時に死んでほしくないとも思っている。独断専行は避けろ」
俺は思ってもない言葉でアインスを引き留めた。
こいつを使い潰す時は今ではない。
そう、少なくとも...あのプロトタイプが完成するまでは。
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