118-恋路の終わり
数時間後。
俺は地上に降りていた。
場所はビルジースプライム。
『周辺の状況を確認してはいますが、伏兵には気を付けてください』
「ああ、大丈夫だ。改良型ポケットシンシールドジェネレーターがある」
前の適当な代物ではなく、Noa-Tunの設備を使って作ったものだ。
艦砲二発程度であれば耐える。
『では。お気をつけて』
俺はゲブラーとケセドを伴って、世紀末といった様子のビルジースプライムの首都を歩く。
もうすぐ城も突破できる。
デーヴァとは事前に集合場所も決めてあるからな。
この国が終わるのも近い。
「皇帝はまだ見つからないのか?」
『はい、女性のようですが......除外フィルタから可能な限り候補を外していますが見つかりませんでした』
「やはりあの巨艦に乗っているんだろうな」
俺には不思議な直感があった。
あの船は強いが、今の仲間たちなら俺なしでも勝てる。
ネムとアインスの指揮は、かつての仲間たちを思い出させるほどだ。
『.....! 正面から戦車が来ます!』
「やれ、ゲブラー」
『――――』
ゲブラーが突撃し、瓦礫を吹き飛ばして現れた戦車に飛びかかる。
両腕のブレードを使って装甲を切断し、中の人間をばっさばっさと斬って回る。
この辺りは、まだまだ改良の余地があるな.....
対人に特化しすぎているせいで、対物には強引な手段を取る以外は何もできない。
別のロボットを作るか。
指揮官を乗せられて、対人・対物どっちもできる......夢が広がるな。
悲鳴と無慈悲な発砲音が響くビルジースプライムの首都を、俺は集合地点に向かって歩くのだった。
その頃。
ディーヴァもまた、地下の脱出路に向けて急いでいた。
派手な服装から質素な服装に着替え、隠し通路を活用していた。
「(.......ごめんなさい、父上、母上。それに――――)」
ディーヴァは、今まで死んでいった人たちを思い浮かべる。
彼らはみな権力闘争や病気で死に、最後に残ったディーヴァは、家臣や新たに成り上がった者たちに利用されてきた。
それでも知識をつけ、皇室の権威を盾にして皮肉ぶり、古風な言葉遣いで大人びた雰囲気を出してディーヴァは生きてきた。
だが。
もうそれは、終わりに近づいていた。
自分を認めてくれる、自分に何の価値もなかったとしても、それでも支えてくれる人と共に生きるのだ。
出撃した艦が必ず敵を打ち破るだろう。
だからこそ、最後にディーヴァはするべきことをしなければならない。
油断し切っているノーザン・ライツを...殺さなければならない。
「(もうすぐ、出口...)...えっ?」
だが。
脱出路の前には、一人の男が立っていた。
それは、ノーザン・ライツでも、シンでもなく。
自分の専属騎士である男だった。
不躾な視線を向けるのでディーヴァは嫌っていたが...
「お、おお。妾の共をしてくれるのじゃな、共に行こうぞ」
「.........国民はこんなに苦しんでいるのに、あなたは一人逃げるのですね。敵に情報を売り渡しておきながら...ノコノコと!」
「何を根拠に!」
「全て知ってるんだよ、この毒婦が!」
騎士は、液晶が半壊した通信機器を出した。
隠し小物入れを見破られたのだ。
「父さんも...母さんも皆死んだ...死ななくていい人たちだったのに! ディーヴァ皇女、悪魔に魂を売ったお前はここで、死ねっ!」
「待...」
その声が、届くことはなかった。
暗い地下室に、何度か鋭い銃声が響いた。
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