115-APOCALYPSE
そうして、蹂躙が始まった。
シンは主力艦隊100隻を下がらせ、20隻を残して代わりにミドガルズオルムをジャンプさせ、首都防衛にあたる人間達にとどめを刺しに向かった。
攻城戦艦の登場で、脆弱なステーションやコロニーは次々と何万人もの棺と化し、爆撃艦による絨毯爆撃を受けて惑星の地上は三度焼き払われ、放射能と有害物質によって二度と住めない死の大地と化した。
『掌握、62%に進行』
「進みが遅いな」
『申し訳ございません、星系内に小型から中型の基地が多く...』
「なら、民間人に偽装した自爆特攻輸送艦でも出すんだな」
『了解』
略奪。
私刑。
強姦。
戦場で負けた側が支払うことになるそういった屈辱は、Noa-Tunの冷徹な軍隊の前では起き得ない。
あるのはただ、
屠殺。
破壊。
それだけである。
『司令官、自爆特攻輸送艦ですが、順調に成果が上がっています。今まで救助を求めて来た民間人の声を収録して、私なりの判断で加工して流用しています』
「あんまりやり過ぎるなよ」
とにかく、星系内の敵対勢力を排除しなければ、領域支配ユニットを係留できないのだ。
シンとオーロラは、敵を排除するためならば何でもやった。
その殆どがアインス発想ではあるものの、
基地への輸送艦自爆特攻。
民間人に爆弾を仕込んで救助させる。
通信コードと殺した士官の声を利用した通信帯域の割り出しと発信源特定。
月の表面への爆撃。
アステロイドベルトへのキラードローン散布。
人道を踏み躙る悪魔の所業によって、ナータリアの膨大な人口は、一週間で半減した。
ゲートを封鎖され、粘着質な妨害と共にコロニーや大型基地は物資不足に陥り、内部で陰湿な争いが起こった後に、なんの皮肉か武装が機能しなくなった事で艦隊に襲われて基地が陥落。
内部に酸素破壊爆弾を投射されて窒息死。
人類の非道の歴史が全て、この星系に集っていると言っても過言ではなかった。
「はぁ...はぁ...ようやく削り切った...とんでもない人口だ...」
そして。
それから二週間後。
ついにナータリアはNoa-Tun領土となり、その名前を『エンドスランダー』と名づけられた。
そして、来たる首都星系決戦のために、シンはある決断を下す。
「エンドスランダーに、ホールドスターを設置する」
『!』
オーロラが驚く。
いや、驚くふりをしただけだ。
もともと、クロトザク決戦の時から準備はできていた。
そこから更に必要な資材を分配し、今に至るのだ。
「何、別に恒久的な措置ではない。ビージアイナ首都を攻略して領有権を主張後、そっちに移して要塞とする。そして、その名は」
『TRILL-HEIMですね』
「そうだ」
こうして、エンドスランダーにホールドスターが係留され、多くの主力艦や艦船がそこに留まるようになった。
首都陥落まで、残り一週間。
「中々、苦しい状況です...」
『構わない。ノーザン・ライツさえ殺せば、Noa-Tun連邦は手を引かざるを得なくなるからな』
ディーヴァは、会議において責任を受けて叱責され、すこし落ち込んでいた。
だが、それもシンと通話することによって発散できていた。
『この間も言った通り、赤い船に乗っているのがノーザン・ライツだ。奴の性格上、必ず君に会いに来るはず。その時、恐らく油断しているだろうから、彼の事は君自身が殺せ』
「.....はい」
『あとは俺が何とかする。責任を取って辞めさせられるかもしれないな....』
「そうしたら、こちらで匿います。どうせ、この国はもう.....」
国民の九割を失ったビージアイナ帝国は、今更勝利を収めたところで先がない。
だからこそディーヴァは、シンと一緒に王国に逃げようと考えていた。
好きなものを食べて、彼と共に過ごし、労働もして――――
軽い考えではなく、彼女は確かにそう思っていた。
『ははは、分かった。では、そろそろ切るぞ。回線の監視が最近は厳しいんだ』
「はい」
だが。
罪と罰――――
国民の命を軽視し、男に魂を売った女が。
ただ赦される筈がないのだ。
それをディーヴァは、まだ知ることはない。
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