113-主力艦決戦 前編
そして。
ついに決戦の日が訪れた。
ビージアイナ帝国側は帝都からスターゲートで一ジャンプのナータリアを最終防衛ラインに選び、わざと一隻のバライエルードを、座礁している体で放置した。
「あっ、これは確実に罠だな」
『ですね』
そしてそれを、シンとオーロラが操るバックドアが捉えた。
バックドアの特徴として、燃料なしにジャンプピンガーを展開できるが、その代わり遮蔽することはできないというものがある。
『敵の小型艦を捕捉』
「ククク、来たか――――罠とも知らずに!」
ファルシー将軍は、スキャンに映った敵艦の情報に、内心狂喜乱舞していた。
餌が手中に飛び込んできたのだから。
「ジャンプピンガー展開」
『了解。まずは先行で、一隻アヴェンジャーを投下します』
「ああ」
シン達は、アヴェンジャーをピンガーにジャンプさせる。
アヴェンジャーはピンガーへとジャンプし、宙域へと現れる。
『ターゲット、ロックオ――――!?』
「なるほど、ワープ妨害がない分、こういう事が出来るのか」
シンは呟く。
ビースミルコルドがアヴェンジャーに体当たりをして、その速度を相殺する。
これにより、アヴェンジャーはワープ航行で逃げる事が出来ないという事だ。
「ヒャハハア!! やぁっと、我が手中に! ハマって、くれたぞおおお!!」
ファルシー将軍は、本性をむき出しにして叫ぶ。
それもそのはず。
帝国をここまで苦しめたNoa-Tun連邦なるテロリストの、その自信の源である主力艦は、今や撃沈一歩手前に来たのである。
「さぁ! 精々支援を寄こすんだなァ!」
「よし、追加で主力艦を50隻投入。様子を見る!」
『はい』
その声が届いたのかは分からないが、シンはそう命じた。
そして、ジャンプピンガーに向かって50隻の主力艦がジャンプする。
「さぁ、来たぞ、餌が......え、さ........な、何だと!?」
ファルシー将軍の声のトーンが、一気に下がる。
それもそのはず。
途轍もない大きさのジャンプポータルが、宙域に出現し。
アヴェンジャーに負けずとも劣らぬ大きさの艦船が大量に出現したのであるから。
『き、旗艦級戦艦、総数51に増加!』
「く、クロムセテラスとジルストリークを投入せよ!」
『はっ!』
追加でワープしてきたクロムセテラスとジルストリークを見て、シンは一瞬考える。
「(これ程大きい国が、旗艦級を5隻しか持っていない筈がない。つまり、50隻では取るに足らないと考えているのか?)......よしオーロラ。”おかわり”だ!」
『了解!』
主力艦が再び投入される。
そして、その数は遂に。
120隻に到達した。
「あ.......あ..........」
『将軍閣下、し、指示をっ!』
「有り得ん、有り得んではないかっ!! 何故! 何故海賊が!! テロリスト風情がッ!! こんな短期間でぇ......主力艦を増産できるはずがない!! うわぁあああ!! たすけ、助けてぇっ!!」
余りのショックに、ファルシー将軍は幼児退行してしまう。
これにより指揮系統を失ったビージアイナ帝国主力艦隊は一気に危機に陥った。
『敵主力艦、攻撃してきます』
「おかしいなあ......普通100隻も主力艦が居たら、追加で戦力を投入してくるはず.....まあいい。オーロラ、適当に沈めとけ」
『了解しました』
120隻の主力艦の砲塔全てが、最初からいたバライエルードではなく、ジルストリークに向く。
艦載機戦より、純粋な戦闘力を懸念したのである。
『いけないっ!!』
クロムセテラスがその前に立ちふさがり、砲撃を受ける。
シールドを貫通したミサイル・レーザー・砲撃。
あらゆる主力艦の持つ攻撃手段が襲い掛かる。
それだけではない。
主力艦の中には、艦載機母艦も無数にいる。
本来は艦載機を乗せる船だが、天空騎士団は数が少ない。
そこで――――
『全艦載機、ドローンを展開。一隻300機でコントロールします』
Noa-Tun連邦の主力艦隊から、夥しい数のドローンが発艦する。
そして、ついに船体に大穴が開いたクロムセテラスが、爆炎とともに轟沈し始める。
『クルト! 何故そんな無駄なことを!』
『無駄じゃないさ、愛する君を守れたからね――――じゃ、バイバイ』
クロムセテラスが当然のように撃沈し、通信が途絶える。
そして、その映像を見ていた人間すべてが理解した。
最終決戦が始まったのだと。
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