103-怪獣大決戦

「というわけで、今日は主力艦を落とすぞ」


俺の言葉に、その場にいた全員が理解できない、といった顔をした。

当然だ、今回は普通の星系占領戦として皆を呼んだのだから。


「し、シン様!? しゅ、主力艦って.....あの、主力艦?」

「そうだ」


ネムはよく勉強しているな。

非主力艦など比べ物にならないほど強力な、その勢力のナイフともいうべき存在。


「今回攻略する星系には、ビージアイナ帝国が保有する五つの主力艦のうち一隻が駐留している。当然、これを放置して星系を占領することはできないし、これを攻略することで、帝国は大損害を被る」


本来主力艦とは、多くの人員を乗せ、膨大な建造費と、莫大な資材を投じて作るものだ。

うちのように、オーロラが操作し、同じく無料で集めた資材で無料で作る高級戦艦程度の主力艦とは重みが違う。


「とはいえ、主力艦には通常の艦船の攻撃は殆ど無意味といっていい。その逆もまた然り、主力艦からの攻撃は巡航速度の非主力艦に対してはほとんど当たらないといってもいい。....つまりは、当たることがあれば、確実に撃沈されるということだ。」

「はーい!」

「よし、ネム...発言を許可する」

「主力艦に対して非主力艦の攻撃が通らないということは....こちらも主力艦を出すんですか?」


いい質問だ。

そして、その通りだ。

俺もうなずく。


「その通りだ。つまり――――主力艦を、お高くて文字通り強い船を、守らないといけないな?」

「....つまり、大艦隊もまた、主力艦戦には必須というわけですね」


ツヴァイが発言する。

まさに、その通りだ。

俺はネムを撫でてやり、ツヴァイを称賛する。


「流石だな、ツヴァイ。アインスも見習うことだ」

「イエッサーッ!!」


アインスが大声で叫び、敬礼する。

心なしか怒っていそうな気がするが、気のせいだろう。


「では、これより作戦を開始する」


俺の言葉と共に、オーロラが艦隊を飛ばす。

戦力概要については、味方にはすでに知れている。

投入する主力艦はアヴェンジャー一隻。

増産している主力艦は沢山あるが、あれらは『ドレッド・ボム』作戦のために取っておく。


『アヴェンジャーのジャンプポータルを展開。周辺に展開中の艦隊をジャンプさせます』

『ナージャ。自力でジャンプ可。後続で参戦』


そうそう、ナージャも自力でジャンプできるようになった。

ジャンプドライブには膨大なエネルギーが必要なのだが、ナージャの場合それを船の機関で補う事が出来る。

主力艦とは違い、周囲の船をジャンプさせるほどのポータルは生成できないようだが。







敵の星系にジャンプした艦隊は、散開して各個に分かれてワープする。

全てが対構造物に特化した艦船であるため、構造物の破壊を開始し、主力艦を釣ってから主力艦を投入するのだ。


『主力艦と言えども、インターディクションフィールドの内部ではワープが出来ないはずだ。あれは、クロトザクのフィラメント式ワープも阻害する』


主力艦を釣りだしてしまえば、完全にNoa-Tun側の勝利である。

アヴェンジャーの強力無比な攻撃と、味方艦隊からの妨害を一挙に引き受ければ、主力艦といえども耐えられない。


『こちら第七ステーション! 敵の襲撃を受けている! 恐らくNoa-Tun連邦の仕業と思われる! 至急応援を! 敵の規模は不明、巡洋艦を多数視認できる!』


そして、迎撃艦隊が出動を始めた。

だが、それはシンをにやつかせる原因にしかならない。


『愚かな、待ち伏せをしてないとでも思ってるのか?』


フォールダウン級ワープ妨害型駆逐艦と組んだ、トリスタン級包囲殲滅型巡洋戦艦。

それが、中央ステーションと第七ステーションの間にインターディクションフィールドを展開しており、艦隊を引っかけると同時にフォールダウンは離脱。

ほぼ同時に、八隻のトリスタンがブラストウェーブを放ち、小型艦ばかりの応戦艦隊を即座に撃滅させた。


『敵の数隻は離脱していきます』

『放っておけ、どうせ今のが今集められる総戦力だろう。すぐに迎撃が集まってくるから、トリスタン艦隊を帰投させろ』

『了解』


ブラストウェーブは非常に強力なものの、範囲は非常に狭い。

射程範囲の広い相手に対しては一方的に撃たれるために、シンはトリスタンを離脱させたのだ。

そして。


『主力艦を出動させよ、敵に見せつけて、撤退させるのだ!』


感情的判断げんばのはんだんにより、主力艦がついに出動することとなってしまうのだった。

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