104-バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!
『敵の主力艦が第七ステーション付近に出現しました。今のところは動きがありませんが――――?』
『この状況で主力艦を出してくるということは、向こうはこちらが主力艦にびびって逃げるのを期待しているんだろうな――――思い通りだ』
直後。
主力艦の周囲に、数隻のフォールダウンが現れる。
遮蔽装置によって姿を消しつつ、こっそり近づいていたのである。
インターディクションフィールドが展開され、主力艦の足を封じる。
『こちら『アディンバドル』艦長、敵の妨害によりワープが封じられた! 至急応援を――――何!?』
一隻の船が、特殊な信号を発した直後。
巨大なジャンプフィールドが、第七ステーションの眼前で発生する。
そして、それは現れる。
『ばかな.......ただの海賊勢力じゃなかったのか....?』
『主力艦だとぉ!?』
ジャンプフィールドから、重厚な鈍重さを秘めた巨体が姿を現す。
周囲の艦船を圧倒し、アディンバドルよりも一回り大きいその艦を、艦長はあるものと誤認した。
『まさか......タイタンなのか....?』
旗艦級戦艦を超える旗艦級、
アヴェンジャーのその威圧感は、それほどのものであったのだ。
『まずい...タイタンには勝てん! 撤退用意! 全速力で撤退せよ!』
『タイタンじゃないが、タイタンが出たくらいで何で逃げるんだ...?』
通信を傍受していたシンは、心底疑問そうに首を傾げた。
SSCでは、
強力なことに変わりはないが、優先して生産するほど余裕があるわけでもないのである。
『敵主力艦、撤退を開始』
『インターディクションフィールドの外に出すな、最終兵器起動!』
『了解、最終兵器“ギャラルホルン”、エネルギー充填開始します』
アヴェンジャーに積まれた最終兵器ギャラルホルンが、アディンバドルに向けられる。
前回の『ランサー:オーロラ・グランツ』とは異なり、『ギャラルホルン』は貫通力とその後の爆発力に重点を置いている。
『エネルギー充填完了、重力傾斜による弾道変化を計算完了。誤差修正します』
『フォールダウン全艦離脱せよ』
『敵旗艦に大規模な熱源の上昇を確認、攻撃の準備と思われる。至急離脱せよ』
『離脱できるものならとっくにやっている!』
そして、アヴェンジャーから放たれた赤黒い閃光が、アディンバドルに直撃した。
シールドが一撃で貫通され、爆発のエネルギーがアディンバドルの内部に雪崩れ込む。
『こちらアディンバドル、旗艦内部に深刻な損傷を負った、これより艦を放棄して撤退する!』
悔しげな艦長の通信が響き、アディンバドルが動きを止める。
そこを、容赦なくアヴェンジャーのレーザー砲撃が襲う。
同時に、Noa-Tunのフリゲート艦隊が動き始め、アディンバドルから脱出する船を撃ち始めた。
『奴らには騎士道というものがないのか!?』
驚愕したように、艦長は叫ぶ。
それを聞いていたシンは、呟く。
『騎士道はないな...シン道はあるが』
死が最も崇高な救済である...とは言わないが、シンの基本方針は使えると思った人間以外は身分やその状態に関わりなく殺害するというものだ。
本来シンとオーロラがいれば回るので、よっぽどの事がなければ下手に生かして禍根を生む必要はないのだ。
『俺は崇拝も畏怖も必要ない。踏み潰して、開拓して、資源を奪い取るだけだ』
『そこが私の気に入っている点です、踏み止まらないその姿勢こそが、司令官を司令官たらしめていますから』
内部の誘爆が機関部に達したアディンバドルは、内部で巻き起こった爆発により、数度爆風を吹き出して沈黙した。
最早外も中も使い物にならない、スクラップである。
『司令官。ゲート停止、完了』
『よし、アヴェンジャーは戦闘を継続、対ストラクチャー戦を行え』
逃げ場を封じた連邦艦隊は、猛然と敵の残党とその背後のステーションに向けて襲い掛かるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます