047-皇女の現状
それは悩んでいた。
『定義不能、再考察――――情報不足。《書庫》にアクセス.....失敗』
先程の戦い。
そこで「それ」は見た。
自分に渡された技術を遥かに上回る、全く未知の技術の数々を。
シールド中和弾では全く減衰しないシールド。
恐るべき耐久力を持った奇妙な船。
そして、的確にワープ妨害ドローンを破壊してくるその統率力。
未知の戦術の数々。
『定義不可…エリアス様、至らない私をお許しください』
「大切断」と定義するイベントの直前に伝えられた、現管理者の名を。
『オーロラフィルター:これより先、残酷描写などが続きます。苦手な方は、次の更新をお待ちになるか、既に次話がある場合は先へ進んでください』
採掘艦襲撃から三日後。
俺は流石に気になって、オーロラに尋ねた。
「なあ、皇女って面会できるか?」
『? ええ…しかし、なぜお会いに?』
「流石に心配になってきた」
ここにネムとルルはいないので、俺は話を続けた。
皇女はここ数日で低脅威から順番にインプラントとドリップを試験していて、今は92%の試験進行度だ。
精神が無事なうちに、事情聴取だけしておきたい。
『可能ですが、現在は精神補強剤の過剰投与による副作用の試験中ですので、まともな会話はできませんよ?』
「それでも構わない」
俺は頷くと、席を立った。
その数十分後、俺は自分の選択を後悔することになる。
「あへぇ…?」
「ダメそうだな?」
『はい、精神補強の副作用は、血流の低下だと予測していたのですが、実際には意識の混濁でした』
焦点の合わない目でこちらを見る皇女がいた。
椅子に拘束されており、相当暴れたのかベルトの留め具の穴が広がっていた。
手すりにも、引っ掻き傷がある。
「…ぇ?」
「美人もこうなっちゃおしまいだな」
やったのはオーロラだから俺は関係ない。
関係ないといったら無い。
「しかし、意識が混濁してるって事は、ここで俺に服従しろとか、被虐趣味の可哀想な奴になれとか、クロトザク人を殺せとか言ったらその通りになるのか?」
『いいえ。そこまで緩くはないのですが、こちらの質問にはある程度答えます』
「そうか....どうして、Noa-Tunに対して宣戦布告無しの攻撃を仕掛けた?」
「あぇ....?」
ダメそうだな。
あまり複雑な質問には答えられないようだ。
「俺が嫌いか?」
「ぁ、り、す.....」
アリス?
いや、この場合は「あります」って意味か?
「よろしい。それで、お前が大事に思っているものはあるか?」
「え....?」
大事なものが無い....? いや、まさか。
「こ…う…」
「なんだって?」
どうやらあるらしい。
時間をかけて聞き出してみると、どうやら贅を尽くした玉座が心配らしい。
こんなになっても、金と宝石の心配とは…
「逆に哀れに見えてくる」
俺と同じで、親の教育が良くなかったんだろう。
まあ、蝶よ花よと育てられたのだろう。
俺に見向きもしなかった両親と違って。
「まあいい、対応は変わらない」
これは俺の意思だ。
Noa-Tunの総意では無い。
「決して壊すな」
『分かりました』
俺は踵を返すと、実験室を後にした。
この命令のせいで、試験は99%で停止してしまったが…(副作用が治療不可、もしくは即死と判断されるものがあったため)しかし、この先俺はこの命令をして良かったと心から思う事があるとは、微塵も思っていなかった。
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