048-日々

敵の残骸を解析し、俺たちは一つの答えに辿り着いた。

こいつらは操り人形に過ぎず、そして少なくともドローン技術ではNoa-Tunの一歩上を行くと。


『物凄い技術です。このパワードライブを現行のドローンに組み込めば、性能が2.5倍になりますよ!』

「じゃあ、是非とも技術を奪いたいな」

『そうですね...』


ドローンの構造は単純。

重力制御装置、推進器、パワードライブ、エネルギー変調装置、レーザータレットだけ。

レーザー自体はこちらとほぼ威力が変わらず、消費電力も同じだった。

だが、パワードライブだけが異質。

それから、当然だが乗員はいなかった。

AIは丸い金属のような電子頭脳があり、それに収められているようだ。


『パワードライブの分析中ですが、理論がよく分からないので当分実用化は無理ですね』

「お前でも分からないんだな」


意外に思って俺が呟くと、オーロラがむすっとした表情になる。


『流石の私でも、基礎理論ゼロからの解析は不可能です。超絶AIでも神ではないのですから』

「それは良かった。アイアムゴッドとか言い出したら、初期化しようと思ってたからな」

『アイアムゴッド...は司令官が一番嫌いですからね。仕えるものに配慮するのは、AIのお仕事ですから』


オーロラの返答に頷きつつも、俺は考える。

これほどの技術力を持ちながら、何故採掘艦を襲った?

普通に考えて、要塞を建造中の戦闘艦隊を襲撃した方が合理的じゃないか?


「シンさまー!」


その時、背後から声が響いた。

振り返ると、ネムがいた。


「どうした?」

「お姉ちゃんが、ご飯の時間だって!」


もうそんな時間か。

丁度いい、頭を休める時だ。


「オーロラ、あとは頼んだ」

『お任せください』


俺はオーロラに後を任せ、食堂へと降りた。







オーロラはシンがいなくなるや、超高速でタスクを完了させる。

今後の長期戦略や基本戦術のアップデート、新造艦の建造スケジュールの調整、資源管理、食糧管理、燃料管理、燃料採掘の目処立て、艦船の自動メンテナンスのトリアージ、皇女のアフターケア、倉庫管理、ネムとルル専用の娯楽管理、Noa-Tun内の清掃や各部点検などである。

それが終わると、ホログラムでカウチを出現させ、そこに寝っ転がる。

そして、とある映像を見始めた。


『やはり、これに限ります』


それは、Noa-Tunの過去の戦いの記録だった。

現状の戦力よりも遥かに高価で強力な艦船が戦場を飛び交い、主であるシンを含めた複数の司令官クラスの指令が行き交う。

それはオーロラにとっては良い頭の体操でもあり、シンの声に多少意識を寄せているものの、戦術アップデートにはとても役に立つ。

何より......


『司令官は優秀ですが、上には上がいますね...やはり』


シンが慢心しない理由はそこにあった。

奇抜な戦術を使う敵や、損失を顧みずインフラの破壊に努める敵。

スキャンの範囲外にセーフスポットを作って潜伏したり、帰還中の艦隊を待ち伏せて纏めて爆撃艦で吹っ飛ばしたりなど、シンの戦術の裏付けともなり得る戦いは沢山あった。


『ならば、私も――――進化し続けなければ』


オーロラはそう呟くと、映像システムを落として立ち上がった。

司令官に並び立ち、サブ頭脳の役割を果たす。

それが彼女の存在意義レゾンデートルなのだから。

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