044-資源の使い道

採掘と採集は、辛く厳しい修羅の道だ。

アステロイドがどんな鉱石を含有するか、産出した鉱石を何に使うか、その価値は、希少さは...それらを全て把握しなければ、時間を無駄にする。

それは燃料とガスも同様だ。

燃料は氷の中に含まれる物質を使用可能に精錬する必要があり、その数は多岐にわたる。

ガスは様々なドリップやインプラントの原料となり、たまに工場機械の部品にもなる。

そして、最後に...惑星から飛び出すとんでもない数の資源だ。

まだ獣人の国周辺にしか展開させていないのに、獣人から凄い数の資源が提供されていた。

ドローンは探査や建造はできるが、地上での採掘や採集はできないので、獣人たちへの指令は徹底しないといけない。

そういうわけで...


「だああああああ! 資源の数が多すぎる!」

『ですから、私が管理すると言ったのですが...』


俺は今、視界を埋め尽くす資源リストの前で悩んでいた。

俺は採掘屋や産業屋ではなかったので、資源の使い道はよく分からない。

素直にオーロラに任せれば良かった。


「宣言しておいて悪いが、任せられるか?」

『はい、お任せください』


オーロラの手によって、資源が割り振られていく。

後に残ったUnknown...つまり、どんな資源なのか全くデータにないものは、逐一オーロラが実験をしていく事になる。


「いつもすまないな」

『それは、言わないお約束ですよ』


貴様、なぜ知っている! とは思ったが、オーロラは地球の情報くらい入ってそうな雰囲気を感じる。


「それにしても、イグニフロー同位体がだいぶ多く採れたな」

『当分は燃料に余裕がありますね』


Noa-Tunの艦船は、戦艦より上になると航行に燃料を消費するようになり、燃料を別途消費する強力な兵装や機械を積めるようになる。

だからこそ、サイロプラムの原料であるイグニフロー同位体が多いのは嬉しい。


「マグコアとラトプレオスも多いな」


どちらもとある装置の燃料になるモノの抽出前の物質だ。

俺はガスの方に目をやる。


「新たにC-4411とG-0202のガスを発見できたのは良かった。これで“Gariun”シリーズが作れる」


Gariun...ガリアンシリーズは、点滴として投与するとプレイヤーの回避運動能力が一時的に増加するモノだ。


皇女アレで実験してくれ。無害なようならルルに投与するのも検討する」

『わかりました』


皇女の...名前なんだったかな...まあとにかく、実験は進んでおり、全体の42%の試験が終了している。

医療用ナノマシンの目を見張る消費量からして、相当な事になっているんだろうが、正直なところ関わり合いになりたくない。


「それから、ネムのお気に入りの料理については情報は入手できたか?」

『ティファナ様との会談の際にお尋ねしたところ、レシピと原料を特定できました』

「わかった、それとなく伝えておいてくれ」

『承りました』


二人には健やかに育ってほしい。

ホールドスターの一人では意味のない設備も、二人が伸び伸び過ごすには丁度いい。

二人は何もしていないわけではなく、ルルは戦闘機のパイロットとしての訓練をしているし、ネムは子供の義務である遊びを遂行している。


「この平和がもう少し続けばいいんだがな」


俺はふと、そんな事を思ったのであった。

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