034-新しい家
シャトルの中で、俺たちは椅子に座って談笑していた。
ティファナは最初こそシャトルの内部に戸惑う様子だったが、その内慣れてきたようで話に入ってきた。
「そうですね、この国は農産物と狩猟が中心です」
「魚などはいるのか?」
言語勉強に努めたおかげで、俺も獣人語を若干カタコトだが話せるようになった。
そんな俺の質問に、ルルが答える。
「一見すると魚が取れないのですが、地底に湖があってそこで獲っています」
「成程」
地底に湖が...ということは恐らく、最後の避難場所もそこにあったんだろうな。
この辺は空洞が多くて、鉱物資源の採取に役立っている事も考えると、なかなか特異な土地柄と言える。
「おさかなさんはね、たくさん取れないから、偉い人しか食べられないんだって、お姉ちゃんが言ってた!」
「こら、ネム」
やっぱりそうか。
栄養状態も悪そうだったし、満足に食事ができていたのは上層部だけだったようだな。
「これからも食糧支援は続ける予定だ」
「ありがとうございます、農地の拡大が終われば、国民や家畜にも充分な栄養が行き渡ると思いますから、その時はまた」
「ああ、分かった」
今までは国防線を拡大できない関係上、農地を下手に増やせなかったが、今は侵攻があれば哨戒班が駆けつけるし、農地を守る手段を構築するまでは首都を失った国々は侵攻する準備ができない。
それどころか、誰かがぶっ放した神罰を、本当に神の怒りと勘違いした国家もあった。
「聞いたところによれば、我々に矛先を向けた国々に、神罰を与えになってくださったのですね」
「...どこかの神の気紛れだろう、俺には関係ないな」
「そうですか...」
しゅんと俯くティファナ。
悪いな、支援だけと言った名目上、私がやりましたとは言えないのだ。
「......っと、だいぶ話し込んでしまったな」
その時、俺は時間が正午を示していることに気が付いた。
そろそろ昼だ。
「ティファナ殿、また会おう」
「ええ、またお会いしましょう、星空の王」
俺は残念そうにするティファナを降ろし、シャトルを発艦させる。
......二人を乗せて。
「これからどうするのですか?」
「ノーアトゥーンに戻って、三人で食事をする」
「やったぁ!」
いやー危なかった。
ここに来てから人工知能と幼女しか相手をしていないのに、あれはずるい。
俺だって男だからな....
『大気圏を離脱、ノーアトゥーンへのドッキング軌道へ入ります』
「シン様、あのお城は.....?」
その時、ルルが宇宙空間を指差して何かを尋ねてくる。
「ああ、あれは....
もう殆ど完成状態で、あとは工業コアを稼働させるだけで動く。
これから先クロトザク戦線を最終局面に移すうえで、本拠地被襲撃の際に役に立つだろう。
「船を........」
「完成したら、船を作る工程を見に行こう」
「....は、はい!」
俺も興味があるんだ。
コルベットやフリゲートを艦隊単位で扱ってはいるが、現実であれを作るとなると、一隻一時間程度で作れるわけないからな。
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