033-惑星降下

戦いは終わり、味方の被害は軽微、敵の被害は甚大という結果で終わった。

....のだが、指揮に夢中で式に気が付かなかった。


「しまった.....そうだったっ!」


ルルとネムと結婚するんだった俺....

まあ、結婚という名の保護名目の確保だから、式を挙げる必要はないんだが。


『ご成婚おめでとうございます』

「ふざけた事言ってないで、送迎用のシャトルを準備しろ」

『了解です』


既に向こうでは二人が待っている。

俺はラフな格好に着替えると、Noa-Tunの第四格納庫まで移動する。


「久しぶりに見たが、結構デカいんだな」


画面だけで見ると、やっぱり小さく見えるものだが。

シャトルはコルベットサイズであるにもかかわらず巨大に見えた。

乗り込むと、ちゃんと内部構造も存在していて、見ただけでは分からない様々な機材が壁面に設置されていた。


「まあそもそも、SCCは一人一人が船に乗って動かすゲームだしな」


オーロラが操作しているが、本来はアカウントにつき一隻、場合によっては複数のアカウントを同時に運用したり、他の人とパーティー....フリートを組むことで艦隊を形成するゲームだ。

だからこそ、一人で操縦できてもおかしくないのだ。

今日はオーロラにやってもらうが。


「おおっと」


シートベルトを締めて、エアロックを閉じるとシャトルは浮き上がり、格納庫の内部をゆっくりと進む。

ホールドスターは超小型、小型、中型、大型の格納庫がそれぞれ複数個あるので、宇宙に出るのは早かった。


『司令官、これより惑星の降下軌道に入ります』

「ああ」


シャトルは惑星へと降下する。

大気成分がほぼ地球と同じの為、大気圏突入も地球と同じプロセスを踏んだ。

違ったのは、海上に着水するのではなく、真下を向いた姿勢から正面を向く姿勢に転進したことだ。


「凄いな、Gをほとんど感じなかったぞ」

『Noa-Tun内で歩行できるのと同じ理論ですよ』


シャトルは風を切って草原の上を飛翔する。

遠くに見える森を越えると、獣人の国だ。


「一応哨戒は散らせているんだな」

『はい、そのようですね』


森の境界付近に獣人たちが見えた。

こちらに向かって手を振っていた。


『着陸態勢に入ります、下部尾翼収納』


SSCの艦船は重力圏内だと着陸できそうにないのが多いが、その辺は強化船体のおかげで問題ないようだ。


「やはり気づいたか」


シャトルの速度的に気づかないかと思っていたが、獣人の国に近づくと、二人が草原に座って待っていた。

恐らく、星に降りるときの流星を見て気づかれたのだろう。


『停止状態を確認、対地距離0m、タラップを降ろします』

「頼む」


タラップを降ろし、外に出た俺は、草原を駆け抜ける風と、暖かな日差しを感じた。

.....いつぶりだろうな、こういうのは。


「シン様!」

「ああ、来たぞ......中で話をしよう」


お付きの人間達の視線が痛い。

だがその時、ネムと一緒に来た獣人が口を開いた。


「こんにちは、我らの護り手様」

「ああ」


兎の獣人だろうか?

こういう目で人を評するのは正直最低だが、胸も尻もでっか.....となるような様相で、目のやり場に困る。


「私はティファナ・ダイレンシア。新しい族長です」

「ということは.....」

「はい、我らが姫様を、丁重に扱っていただけるようにと懇願しにまいりました」

「...そうか、移動用の船故に何も無いが、話は中でしよう」

「はっ」


俺たちはシャトルの中へと入るのであった。

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