035-『ヘーパイストス』

こうして、工城は完成した。

制作期間は2週間ほどだが、動作には全く問題がないようだ。


『では、インダストリアルコアを起動します。工城内に放射線が充満する恐れがあるため、直ちに避難してください』


無人の工城にオーロラのアナウンスが響く。

それを、俺たちはモニターで眺めていた。


『インダストリアルコア起動まで、10、9、8...』


インダストリアルコアとは、ホールドスター内部のコアとは違う種類の動力源で、製造には特殊な鉱物が必要になる。

今回はホールドスターの倉庫に備蓄があったので製造できたが、これからは希少鉱物を探しながらになるだろう。


『7、6、5、4、3、2、1......点火』


直後、ザヴォートの暗い照明が一気に光を放ち、モニターに点灯しているステータスが急速に更新されていく。


ザヴォート 『ヘーパイストス』 状態:係留 惑星軌道上


◇総合製造システム 状態:『起動中』

◇艦船製造システム 状態:『起動中』

◇物品工場 状態:『起動中』

◇小型艦船工場 状態:『起動中』

◇中型艦船工場 状態:『起動中』

◇大型艦船工場 状態:『起動中』

◇旗艦級工場 状態:『切断』

◇資源処理施設 状態:『起動中』

◇化学処理施設 状態:『起動中』

◇物資倉庫 状態:『起動中』

◇中央指揮所 状態:『稼働中』

◇グランドリペアシステム 状態:『起動中』


◆シールド 100%

◇シールド発生コア 状態:『平常』

◆アーマー 100%

◇アーマーリペアシステム 状態:『建造中』

◆HP 100%

◇オービタルコアシステム 状態:『稼働中』

◆非常電源残量:100%

◇インダストリアルコアシステム 状態:『起動完了』

電力バランス:不安定


ホールドスターが本拠地防衛のスペシャリストなら、ザヴォートは生産のスペシャリストだ。

工場で割となんでも作れるし、資源の再処理や加工はお手の物。

おまけに、目玉はグランドリペアシステム。

バカみたいに電力を食うこいつは、リペアに必要なナノマシンを大量生産する施設で、こうしてホールドスターの近くに置いておくと、戦闘時に高速修復が可能になるのだ。


「あのお城は、何なのですか?」

「大きい工場だ...それに、採掘家の守り神でもある」


ホールドスターのものとは違う最終兵器のラインナップを持つザヴォート。

その中には、一定範囲内の味方の採掘艦のみを無敵にしたり、採掘力を上げるナノウェーブを広範囲に展開したりすることもできる。

星系に一個でも置いておけば、複数アカウントでバフをかけたり敵の襲撃に対する防衛力を上げることが可能だ。


『最後の戦いでは使われなかったのですか?』

「あったはあったが、そもそもここのホールドスターを防衛する目的で置いてなかったんだ」


フルで使うととんでもない燃料消費だからな。

アイスベルトが使いたい放題の今だからできることだ。

特に当時は暇人共が物資の出入りを遮断していて、ワームホール経由でしか物品を搬入できない状況だった。

掘れないし持ってこれない状況では厳しいものがあっただけの話だ。


「さぁ~向こうの中央指揮所に行くぞ」

「...はい!」

「面白そう....」


俺は誤魔化すように席を立ち、姉妹を連れて格納庫へ向かうのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る