024-司令官
それから数日後。
俺は戦闘指揮所にて、オーロラからの報告を受けていた。
『現在特定した敵の拠点らしき箇所は、惑星周辺に絞った場合122、惑星外系部には16存在します。そのうち採掘拠点らしきものは惑星周辺に42、外系部に9となります。領域保護ユニットは存在しませんが、通信網整備用のリレーアンテナを複数確認』
「よくやった」
『当然です』
プロトスカウターの八面六臂の活躍により、敵勢力の全貌が段々と明らかになってきた。
かなり大規模だが、その分兵站に問題を抱えているようで、経路を封鎖されるとおそらく何もできないだろう。
『くわえて、遠距離からの目測ですが敵のメイン機関は「核融合」だと思われます』
「...いや、あり得ないだろう」
核融合程度のエネルギーでワープが出来るはずがない。
何か秘密があるな。
『また、敵のワープ時の挙動を確認しましたが、我々の使うFTL航法ではなく、より本物の定説のワープに近い挙動でした』
「空間をくっつけて跳躍するやつか」
『はい』
だとすると、内燃機関で可能な何かしらの機構を持っているな。
アレに引っ掛かるかわからないが、やってみる価値はあるか。
「よし、では作戦を説明する」
『はい』
俺は思いつきの作戦を提案する。
ここから肉付けしていくのだ。
「オーロラの特定した最端のこの基地をワープ妨害型駆逐艦四隻で封鎖し、基地を攻撃する。その際にバンクラバーを一隻、リレーアンテナに接続しオペレーティングシステムをハッキング、言語情報や地理情報などを盗め」
『わかりました、基地攻撃には何を使用しますか?』
「まずは偵察からだな...敵基地の情報はあるか?」
『すでに用意してあります』
モニター上に基地の情報が浮かび上がる。
アウトポストとして存在していて、そこまで巨大ではなく宇宙船と合体、もしくは宇宙船から拡張したような構造だ。
ドッキングしている艦船は戦艦が4隻、それ以下が20余隻程。
ヌル過ぎるくらいだな。
「だが、油断はいけないな。近くに遮蔽艦隊でも隠れてたら最悪だ」
戦力を少なく見積もらせるのは、戦略としては有効だ。
「よしオーロラ、ジャンプスパイダーを6隻配備。ワープ妨害型駆逐艦...そうだな、コスモネットに追随させろ」
『了解』
ジャンプスパイダーは、小さな対象の掃討に特化した駆逐艦だ。
恐るべき精度のミサイルが、これまた恐ろしい速度と連射力で敵を襲うわけだ。
「とりあえず、コスモネットを出撃させるぞ。アルファスカウターを発進させろ」
『発進準備は完了しております、3時間後に敵基地周辺に展開させます』
アルファスカウター。
プロトスカウターの上位版で、隠密型ジャンプフィールドを展開して、遮蔽したまま隠密型工作船を敵地に送り込める。
コイツ自体も、隠密行動だけではなく艦隊行動戦力としては充分な力を持っている。
「戦争に勝つのは簡単なんだ、目を、耳を、胃袋を。一つ一つ潰していくのが戦略だからな」
『戦術では?』
「どっちでもいいだろう、それよりもだ。今回の行動は『ハラス』という、基本の戦術だ。最端の拠点を叩き、生存者を出すことで、相手の艦隊を辺境に向かわせる。これを繰り返し、『反撃したいが国内の防衛に手一杯』という状況を作りだす」
ジャンプの起点になるラジエーションピンガー(通称:ピンガー)を妨害する装置もないので、敵国家に恐らく勝ち目はないだろう。
「それから、軍服を用意しろ。白色で、艦長帽は忘れるな」
『何故ですか?』
「お前は、あの時の敵の3Dデータを投影できるよな?」
『....もしかして、通信時に?』
「そうだ」
俺が総司令だとはあえて開示しない。
「俺は新進気鋭のノーアトゥーン連邦の若き司令官.....ということにして、オーロラに連邦主席役をやってもらおうか」
惑星で獣人を襲っていた敵司令官の3Dデータをオーロラに投影し、俺たちをより大きな組織だと誤認させる。
流石にワンマン組織だとバレるとヤバイ。
「じゃ、頼むぞ」
『ええ。シン司令官』
「俺がノーアトゥーンのニューリーダーだ!」
こうして、今後の方針も決まったのであった。
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