025-カウエッガ採掘拠点攻撃戦

カウエッガ採掘拠点。

そこは、未開拓領域アンノウンに対するフロンティアである。

未知なる脅威に対し対応できるよう、基地には皇国精鋭の戦艦が四隻も配備されていた。

基地自体にも自動攻撃セントリーガンが三十門程度配備されており、この防備を突破できる戦力などいないと、誰もが思っていた。


「だが、それも今日までだ」


基地の外観を、監視のアルファスカウターの「目」を通してシンが見ていた。

彼の目はフィルターを通して戦況を見据えている。


「まずは基地の全面、もっとも防備の厚い場所にモルドレッド級三隻を展開、その背後にスレイプニル五隻を。陽動に使う」

『わかりました、ピンガー展開開始』


基地の真正面に、ピンガー専用艦ブザードがワープアウトし、即座にピンガーを展開する。

ほぼ同時に、モルドレッド級とスレイプニル級がジャンプアウトする。

それにより、基地は瞬時に警戒体制へと移行した。


『......総員、防衛艦隊の指定の配備につけ! 繰り返す! 労働者諸君は奥のバンカーへ、戦闘員は総員、防衛艦隊の指定の配備へと移動せよ!』


宇宙空間故に聞こえないが、けたたましい警告音と共にドックへの入り口が開き、防衛艦隊が出撃してきた。

足の遅い戦艦を後方に、コルベットとフリゲートが手前に来る隊列を組み、モルドレッド級らに対し砲口を合わせる。


『クライス総督、御命令を!』

『全艦、射程圏内に入り次第警告を行う! 無視された場合、即座に射撃を行え!』

『はっ!』


クライス総督は忌々しげに艦隊を見つめる。

自分が守護するこの場所に、たった八隻で攻め込んで来る相手...クライスが崇める皇女様直属の採掘艦隊を襲撃した愚かな卑怯者共。

それに対して、腹が煮え繰り返る思いでいるのだ。


『警告、無視されました!』

『よろしい、全砲門を開け! 全艦並列隊形、あの程度の艦隊、我が艦隊の一斉射で葬り去ってくれるわっ!』


セントリーガンと艦砲が同時に眩い光を放ち、レーザーがモルドレッドへと向かっていく。


『愚か者共が、少しは戦を知れ』


クライスはモルドレッド級が爆沈したと判断して、撤収を命令しようとした時。


『馬鹿な...!?』


モルドレッド級に直撃したはずのレーザーは、モルドレッド級のシールドに弾かれて消えた。

一斉射ですら、シールドを貫通するには至らなかったのだ。


『だ...だが、反撃はしてこないようだな! ならばこちらに部が...』

『クライス総督! リレーアンテナ付近に敵艦らしき船影が出現! 通信システムがハッキングを受けています!』

『何だと!?』


クライスの顔に焦燥が浮かぶ。


『......リレーアンテナにジグラヘルを四隻向かわせよ、ハッキングを阻止するのだ』


ジグラヘルと呼ばれたコルベットが艦列を離れ、リレーアンテナの方へと最大戦速で向かっていく。


『その愚かな策謀も、蛮族にはお似合いというもの...何ぃ!?』


戦況を示すモニターをちらちらと見ていたクライス総督は、唐突に出現した敵影に声を荒げた。


「ジャンプスパイダーは遮蔽して身を隠せるのさ。次からは気をつけろよ...次があればな」


まんまと網に引っかかった獲物に、シンは舌舐めずりをした。


「ジャンプスパイダー、推進妨害アンカー起動、その後、討ち払え」

『敵コルベット艦の速度低下、射撃開始。一隻が轟沈、即座に射撃を再開します、敵コルベット編隊、全滅』


その間もハッキングが進み、シンの前にあるシステムノードが白から赤に染まっていく。

セキュリティプログラムが抵抗するが、超高性能AIであるオーロラが高速で書き換えている。


『システムノードを完全に掌握。データのダウンロードを開始』

『させるものかああああああああ!』


その時。

コルベット艦の一隻がバンクラバーに突進してきた。

だが、ジャンプスパイダーに捕まりあえなく撃破される。


「何がしたかったんだ、アイツ?」

『命令違反と思われますが...体当たり程度でバンクラバーは破壊されません』

「だろうな」


シンは呆れ果てた様子で、爆沈するコルベット艦を見ていた。

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