012-屠殺

その日。

後に惑星イルエジータと呼称される星の勢力図は一変することとなる。

獣人の支配域を殲滅せんとすアルサンドル議長国、ペテレウス大公国、エレメノト王国の連合軍に、数千を超える数のドローンが襲い掛かったのである。




『ドローンによる掃射を行います、敵遠距離攻撃手段の弓矢の射程は恐らく40〜90M前後と想定されるため、上空に到達することはありません』

「ふむ、それからどうする?」

『広範囲に逃げられると厄介ですので、大型ドローンで包囲陣を形成し、約60〜90人程度の集団に分割して各個始末いたします』


効率的とは言えないが、面白い判断ではある。

俺はお茶を頂きながらそれを鑑賞する。


「獣人は巻き込むな、後の交渉に響く」

『はい、ですから攻撃対象外としております。獣人の周囲に人間がいた場合、巻き添えにする可能性があるので即射殺しています』


いい判断だ。

人間の心理を、若干ステレオタイプな視点ではあるものの見据えていると思われる。


「それから軌道爆撃は遅延させて行え。あれほどの大隊が戻ってこなければ、不自然すぎて本国の人間たちはすぐに不信感を抱く、そのタイミングで城を破壊して、神の怒りを演出するんだ」

『それから、国外に搬出された獣人の確保も行うのですね?』

「ああ」


正直ここまでしてやる義理はないが、この惑星で栄えているのは一種族の方が管理しやすい。

人間には衰退してもらおう。







それから数時間後。

勝負は既に決していた。


「圧倒的だったな」

『蹂躙せよとの御命令でしたので』


所詮は中世レベルの軍隊、空を飛び光学兵器で攻撃してくるドローンに打ち勝てるわけもない。

大型ドローンだけでも列車砲並みにでかいので、それに包囲されれば自然と集まるしかない。

そして、屠殺される豚のように決まりきった死を与えられる。


「画面越しだからか、罪悪感は湧いてこないな」

『艦隊総司令、あなたの思考パターンは通常の人間とは異なります』

「俺が狂ってるとでも言うのか?」

『いいえ、そこまでは』


オーロラ、結構言うようになったな。

まあいい、戦後処理だ。


「死体を回収してバイオマスに変換しろ」

『わかりました』


バイオマス...素晴らしい、これで食糧生産施設が使えるようになる。

いくらエネルギーがあっても意味がないが、これさえあればバイオマスを消費することで、自在な食材を生成できるのだ。


『バイオマスを食糧に変換後、獣人の食料として配布します』

「いや、それは流石に...」


元人間の食材をそうと知らない獣人に食わせるのは倫理的にまずすぎる。

あと俺が嫌だ。


「死体を加工したバイオマスは人体への影響を検査後俺に回してくれ。獣人たちには周辺の有機物をバイオマス化して食料として与えてやれ」

『了解しました。それでは、獣人達とのファーストコンタクトは、いつになされますか?』


いつにするか...

とりあえずでいいか。


「2時間後、完全に安全が確保されていればその時に行え。俺が空中に映像を投影して、代表者同士の会談を要請する」

『わかりました』


俺はとりあえずの考えが割と良さそうであった事に気付き、このままでいいかと頷いた。

だが、それが意外な結果を招くことになるとは俺もまだ知らなかったのであった。

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