011-惑星降下

かくして、領域隠蔽ユニット防衛戦は終わった。

被害総額は計り知れないが、この世界ではどうやら税や利用料といったものは発生しないので、修理すればまた使えるようになる。


「で、問題はだ」

『目下の惑星ですね』


例の集落を包囲していた軍勢が、集落に攻め込み始めたのだ。

見る限り、集落側は獣耳が生えた人間が中心だが、基本は抗戦しないで死んでいく。

オーロラとも話し合ったのだが、戦闘の意思は皆無、武器も原始的なもので中世的な周囲の軍隊には及ばないとのこと。


「素晴らしいな」

『ええ、理想的な奴隷です』

「...ん?」


雇用するにはもってこいだと思ったのだが、オーロラは奴隷にするとか考えていたようだ。

奴隷にするのもいいんだが、恩を売って働いてもらうというのも悪い選択肢ではない。


「言語の解析は?」

『簡単なものであればすでに完了しています。ただし、敵性言語のみで友好言語...獣人語と以後表記するそれはまだ未解析です』


所謂“連合軍語”と“獣族語”とかいうものがあるらしい。

そうだ、一応聞いておくか。


「魔法とか、不思議な能力があったりはするのか?」

『いえ、そのような兆候は確認されませんでした』

「そうか...」


少し残念だ。

だが極端に発達した科学は魔法と変わらないというし、それを当てはめるなら俺は魔法使いだな。


「よし、そのセンで行こう。空から舞い降りた魔法使いで大恩人、そういう設定でいけば御し易いはずだ」

『わかりました、では直ちにドクトリンを考案致します』

「任せる」


あいにく俺は出来ることは何もないので、飯を食い、生産の状況を確認し、散歩をし、外を見て時間を潰し、寝るという生活を続ける。

そして。


『ドクトリンが完成しました。名称は作戦規範B-152、適用するのはドローンとなります』


それから三日後、俺が寝る前に歯を磨いているときにオーロラが話し出した。


「わかった、それで?」


歯磨きが終わるまで待ってくれるようなので、俺は歯磨きを終わらせて尋ねる。


『ドローンを降下させ、より効率的に敵軍隊を排除します』

「軌道爆撃はするのか?」

『敵本拠地と思われる場所に半減期の短い戦術核を投射し、短期で無力化します』

「待て、それは酷すぎないか? こちらが恐ろしい存在だと思わせるだけでいい、真ん中の城とかでかいのを吹っ飛ばせ、あれが権威の象徴だからな」


流石に皆殺しは治世に響くだろう。


『しかし、報復への対処に無駄なリソースを使うのは非効率では?』

「お前は俺しか見たことないからな...人間ってのは非効率で予測不可能な存在だ、感情なんてよくわからないものに振り回される」

『学習しました』

「いいや、学習なんかできない。特に人間ってのは読めないぞ」

『では、どうすれば?』

「読めるように制御すればいい、都合のいいようにな」


それがディストピアなんだが、オーロラならそれが愚かな選択肢だとわかってくれるはずだ。


『では、オペレーション・ファーストストライクを開始いたします』

「任せる」


このAIに任せるのは不安ではあったが、かくして俺と惑星住民との奇妙な交流は始まったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る