第六十一話 ステラウィッチ学園祭
ステラウィッチ学園に来てから、もうすぐ一年が経とうとしていた。
私は文字の読み書き、魔族語、剣術、槍術に加えて、この世界の歴史と地理、能力学、薬学等、役に立ちそうな授業を受けまくった。
ミュリエルは授業はあまり受けずに仕事に集中していたみたいだが、仕事も勉強になるし、何よりミュリエルが友達のシャリエットと仲良く一緒に仕事をしているのはとても良い事だ。
ミュリエルは私と出会ってから私に依存し過ぎている所があったし、私も甘やかし過ぎていたのは否めない。
ミュリエルに友達が出来た事はとても嬉しい事なのだが、ステラウィッチ学園を出て行けば友達と別れなければならない…。
非常に残念だけれど、私達もずっとここにいることは出来ないし、シャリエットも同じだろう。
その時期は近づいている。
私は学ぶものが少なくなってきたし、ここにいてはミュリエルとの約束を果たすことは出来ない。
安定した仕事を得るための技術を習得するために、ステラウィッチ学園に来たのだからな。
シャドルースの方は、剣術と魔術の授業を真面目に受け続けている。
剣術で魔物と戦うにはまだ早いが、魔法で戦う分には十分な戦力になるだろう。
それと、ステラウィッチ学園には自分の能力を調べてもらえるところがあり、シャドルースの能力が判明した。
影を操ると言う珍しい能力で、自分の体を陰で覆いつくして隠れたり、近くの陰に移動したりできるそうだ。
シャドルースは、その能力をまだ上手く使いこなせてはいないが、そういう能力だというのが分かったから、いずれ使いこなす事が出来るようになるだろう。
シャドルース本人は気に入ってないみたいだが、とても強い能力だと言えるだろう。
ステラウィッチ学園は、秋に行われる学園祭の準備で大忙しになっている。
学園祭と言っても、私達平民の方には一切関係なく、貴族達の方だけで行われるものだ。
と言っても、準備の仕事がいっぱいあるので、私達はそれに参加して準備を整えていると言う事だ。
貴族の方たちから色々面倒な指図をされるが、給料がいつもの倍出ているので誰も文句を言う人はいない。
私も貴族から指図されつつ、準備を手伝っていた。
そんな時、剣術の教員から呼び出しを受けたので行ってみると、学園祭で行われる武闘大会に出場しないかと言う事だった。
武闘大会では貴族と戦うのではなく、私のような腕の立つ平民達を戦わせて、それを見て楽しむものらしい…。
それと、上位に入り込めば賞金はかなりの額を貰えるうえに、貴族の所で雇ってもらえる可能性もあるらしい。
貴族の所で雇ってもらいたいとはあまり思わないが、賞金は欲しい所だ。
私は即座に出場を決め、ルールなどの説明を受けた。
武闘大会のルールはとても簡単だ。
相手が気絶、または降参を宣言すれば勝利となる。
使用する武器にも制限が無く、魔法も使用可能だが、空を飛ぶ事は禁止されている。
貴族の方で仕事をしていると、たまに貴族の魔法使いが空を飛んでいるのを見かけて羨ましく思っていたりもした。
空から一方的に攻撃されてはどうしようも出来ないし、見た目も面白くないから禁止されたのだろう。
そして、武器に制限が無く魔法も使えるとなれば、当然死ぬ可能性も高い。
実際に毎年、数人の死者が出ているそうだ。
それを聞いて参加を取りやめようとしたが、賞金の魅力には勝てなかった…。
私は、神様から与えられた能力で死ぬことは無い。
しかし、不死の能力は他人に絶対に知られてはいけない能力だ。
私が死なない事が露見してしまえば、悪人が私を利用しようと近寄ってくるに違いない。
そうなってしまえば、ミュリエルとの約束を果たすどころでは無くなってしまうだろう。
勝てない相手と戦う事になったら、早めに降参した方がよさそうだな。
賞金は減ってしまうが、私の能力が露見するよりかはましだ。
少しでも多くの賞金を得られるように、この日から仕事の合間に武闘大会に向けた訓練をすることにした。
「おいらも武闘大会に出たいよ!」
「危険すぎるから駄目だ!」
シャドルースに武闘大会の事を話すと、シャドルースも出たいと言い始めてしまった。
己の実力を測るのには良い機会だが、死ぬ危険がある武闘大会に子供のシャドルースを出場させることは出来ない。
何とか説得し、私の応援をすると言う事で納得してもらった。
「あたいは見に行けなくて残念だけれど…レフィー、頑張って!」
「ありがとう、頑張るよ!」
ミュリエルはステラウィッチ学園祭でも仕事をするみたいで、私の応援に来れない事を残念がっていた。
仕事が無くても、私達平民は入れないから見ることは出来ない。
シャドルースは、私の手伝いをしてくれるから武闘大会の会場に入れるが、試合を見られるかは分からない。
見れなかったとしても、私の傍にシャドルースがいてくれるだけで安心するし、気合を入れて戦う事が出来る。
武器と防具も愛用の物を用意し、武闘大会への準備も整った。
一つでも多く勝って、より多くの賞金を得ようと思う。
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