第六十話 魔法の授業
「ミュールが心配していた貴族は、元気になったみたいだぞ」
「そっか、レフィー、ありがとう」
私が自殺から助けた貴族は、数日間の怪我の治療を受けた後元気になり、今は授業を受けているとの事だった。
ステラウィッチ学園としては、預かっている貴族の子供が自殺未遂を起こした事は大問題だったようで、いじめをやめされるように本腰を入れたみたいだ。
遅すぎる対応だが、対応しないよりましだろう。
いじめが無くなると言う事は無いだろうが、少なくとも、私が助けた男が再びいじめられることは無いだろう。
それにしても、私が助けた男は強いな。
私だったら、とてもではないが授業を受けに戻ることは出来ないと思う…。
私の弱さを実感すると同時に、私も精神的に強くなっていかなくてはならない。
私にはミュリエルを守り支え、シャドルースが成人するまで守らないといけないのだからな。
それと、どうでも良い事だが、神様から三人目を助けたと言われた。
確かに命は助けたが、心は助けてはいない。
助かったのは本人の意思によるもので私は関係ないのだが、神様に言う事でもないな…。
「此度は大切な生徒の命を救ってもらい、大変感謝しています」
私が助けた事で、ステラウィッチ学園からは一年間の授業料免除を与えられた。
授業料免除は非常にありがたい。
免除されるのは私の分だけだが、私の分に使っていたお金をミュリエルとシャドルースに回せるようになる。
ミュリエルは授業より仕事の方に集中しているが、それはミュリエルが望んでやっている事だから、私がとやかく言う事では無い。
シャドルースの方はまだ子供だし、仕事より授業を優先させていこうと思う。
「シャドは何か習いたいことはあるか?」
「うーん、魔法を習いたいよ!」
「そうか、魔法は俺も習ってみたいな」
私とシャドルースが受けている授業は、午前中に魔族語と剣術の二種類で、午後は丸々空いている。
空いている時間を使って仕事をしているが、午後にもう一つの授業を受けるくらいの余裕はある。
せっかく私の授業料は免除になったのだし、一つでも多くの授業を受けたい所だ。
魔法には以前から興味があったし、授業を受けてみようと思う。
ミュリエルも誘ったが、仕事の都合で受けられないと断られた。
ミュリエルは残念そうにしていたが、魔族語を習得出来た後にでも、魔法の授業を受けると良いと思う。
早速シャドルースと共に、魔法の授業を受けてみたのだが…。
「目を瞑り、自分の体の中にある魔力を感じてみましょう」
ローブ姿の教員からそう言われ、目を瞑って魔力を感じ取って見ようとしたが…全く分からない…。
そもそも、魔力を感じるという感覚が理解できないのだ。
生前の日本には魔法や魔力なんてなかったし、レイフィースとして過ごして来た十六年間の間、一度も魔力と言う物を感じた事は無かった。
「体の中に何か光るものがあるよ!」
「それが魔力です。その光を手に平に移動させてみてください」
「うーん、やってみるよ!」
私と違い、シャドルースは魔力を感じ取る事が出来たらしく、それを手のひらに移動させる訓練に移っていた…。
シャドルースは、三日間で手のひらに魔力を移動させることに成功していた。
「レイ兄見て!おいら出来たよ!」
「凄いぞ!」
シャドルースには魔法を使える素質があったらしい…。
一方私はと言うと、全く魔力を感じ取る事が出来ずにいた。
「一般的に魔法の素質がある人は半数くらいで、残りの半数は魔法が使えません。
しかし、魔法が使えないからと言って落ち込むことはありません。
私達人族には、神様から与えられた能力があるのですからね」
私には魔法の素質が無くて、魔法が使えない事が分かった…。
シャドルースは順調に魔法を覚え、小さな火を出したり、少量の水を出したり出来るようになっていた。
少し…いや、かなり
「えぇー、レイ兄も一緒に受けようよ!」
シャドルースには魔法の授業を一緒に受け続けようと言われたが、魔法が使えない私が受け続ける理由は無い。
シャドルースには一人で魔法の授業を受けてもらい、私は魔法を諦め他の授業を受ける事にした。
ステラウィッチ学園の従業数は豊富で、何を受けるか迷っていた。
能力の授業は、能力を伸ばす授業ではなく知られている能力の種類や効果を教えてくれる授業で、出来れば受けておきたい。
この世界の歴史や地理の授業も受けたい所だ。
知識を増やす授業はどれも受けたい所だが、優先すべき授業は武術系だろう。
ここに来るまでずっと戦い続けて来たし、これからもミュリエルとシャドルースを守るために戦わなくてはならない場面が出てくるだろう。
私は、今まで以上に強くなる必要がある。
色々な武術がある中で、やはり槍術の授業を受ける事にした。
槍術はフォルガ村で教えられたので自信はあるが、極めたというには程遠い。
他の武術を覚えるよりかは、槍術を極めた方が良いと判断した。
ステラウィッチ学園で剣術を槍術を極め、ミュリエルとシャドルースを守れる強い男になろうと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます