第五十四話 剣術
授業を受け始めてから一週間ほどで、私は読み書きを習得できた。
ミュリエルとシャドルースは読む事は出来るようになったが、書くのに苦戦している。
それが普通の事で、私は以前の知識があって不正している様なものだからな…。
暫くは二人に付き合って、教えて行こうと思っている。
ミュリエルは朝一の授業を受けた後、同室のシャリエットと共に仕事に行っている。
ミュリエルに友達が出来たみたいで、とても喜ばしい事だ。
私とシャドルースは、次の授業も受け始める事にした。
その授業とは剣術だ。
シャドルースが習いたいと言っていたし、私も習っておきたかった。
剣術はフォルガ村の住人から教えられてはいたが、私には向いていないと思ったので槍術の方に力を注いでいた。
魔物と戦うには槍の方が有利だったからな。
しかし、フォルガ村を出てからは人と戦う必要が出て来た…。
槍の方が剣より届く距離が長く有利に戦えるが、懐に入られると不利になるし、狭い場所だと槍は戦いにくい。
剣を使って戦うかは修得しだいだが、選択肢は多い方が良いだろう。
シャドルースと共に、剣術の授業が行われる広場へとやって来た。
そこには既に十人以上の人達が集まっていて、授業が始まる鐘が鳴る時には三十人位になっていた。
「そこから好きな剣を選べ」
教員が乗って来た馬車の荷台には多くの剣が乗せられていて、皆が一斉に剣を選び取っていた。
私とシャドルースも、順番を待って剣を選び取った。
シャドルースが選んだのは体型に合った少し短めの剣で、私が選んだのはごく普通の剣だ。
「よし、全員選んだな、初めて以外の者は素振りを始めろ。初めて来た者は俺の所に来い!」
私とシャドルースは初めてなので、教員の所へ行った。
他にも四人ほど初めてな人もいて、一人ずつ教員から剣を鞘から抜いて振って見ろと言われた。
剣は金属製だが刃は潰してあるので、初めて剣を振るシャドルースでも安心だ。
「お前は右、お前は左」
剣を振った結果で、教員の左右に分けられた。
どうやら、経験者かどうかの判断をしたようだな。
当然、私とシャドルースは左右に分けられ、訓練も別々に行う事になった。
「基本をしっかり教えてもらうのだぞ」
「うん、おいら頑張るよ!」
シャドルースは男だし、将来独り立ちして家族が出来れば守らなくてはならなくなる。
剣術を覚えておいて損は無いので、しっかり習得して欲しいと思う。
私の方は別の教官の所で、実践訓練となった。
「全力でかかってこい!」
「はい!」
私は用意されていた防具を着て、筋肉隆々の教官と戦う事になった。
教官は全力でと言ったので、私は教官を倒す勢いで遠慮なく攻めさせてもらった!
しかし、私の攻撃は剣で受け流されたり避けられたりして、教官にかすりすらしなかった…。
だがそれでなくては、教えてもらう意味が無いと言うものだ。
「筋は良いが、踏み込みが甘い!他の武器を使っていたりするのか?」
「普段は槍を使って魔物を倒している」
「そうか、よし、お前は短剣を使って訓練をするように!」
「…分かった」
シャドルースが持っていたような短剣を渡され、それで訓練するようにと言われた。
色々言いたいこともあったが、教官の指示に従って短剣で訓練するようにした。
私の訓練は実践的で、他の人との模擬戦が主な訓練となる。
「そこまで!お前は怖がらずにもっと前に出ろ!」
「はい!」
短剣を持たされて、より踏み込むのが怖くなってしまっていた。
槍は自分が優位な距離で戦えるので自由に動き回れるが、剣…それも短剣となると、相手に手で触れられるくらいの所まで踏み込んでいかないと攻撃が当たらない。
しかも相手は普通の剣を使っているので、一方的に攻撃され続ける事になる。
怖がらずに踏み込めと言われても、簡単に出来るものでは無い。
私には不死の能力があるから、剣が当たっても死ぬことは無い。
だが相手は違う。
刃は潰してあるし防具も着ているが、当たり所が悪ければ死ぬ可能性もある。
剣で戦う恐怖は無いが、相手を殺してしまうかもしれないという恐怖がある。
相手の技量は私より少し上くらいだが、実戦経験が無いような基本に忠実な戦い方だ。
相手を崩して一撃を入れることは出来るだろうが、剣を持ち始めたばかりで力加減が上手く出来ない。
しかし、受けてばかりでは私の訓練にはならないし、相手の急所を出来るだけ避けるような形で攻撃を仕掛ける事にした。
「大丈夫か?」
「問題ない…」
踏み込んで攻撃を仕掛け、一撃を与えることは出来たが、それ以上の攻撃を受ける事になってしまった。
今はそれでいい。
これから剣で戦う技量を上げていくのだから。
教官からも色々指摘をしてもらって悪い所も分かったし、少しずつ直して技量を高めて行こうと思う。
「今日の訓練はここまで!怪我をした者は治療してもらうように!」
剣術の授業が終わり、剣の授業を受けられてご機嫌になったシャドルースを連れて寮へと戻って行った。
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