第五十二話 アレグトン その一

 僕の名はアレグトン・ダルバードです。

 ダルバード家の長男として生まれ、両親は優しく、弟と妹の三兄弟仲良く暮らして来ました。

 僕は十三歳になり、ステラウィッチ学園に入園する事になりました。

 僕の住むストストール国では、貴族の子供の殆どがステラウィッチ学園に通う事になっています。

 近隣からも通って来る人がいる程、有名な学園です。

 僕も入園して、様々な事を学ぼうと思っていました。

 だけど、僕が魔法を使えない事で他の人達からさげすまされ、いじめられたりしました…。

 僕が他の人を無視して勉学に励もうとしても、邪魔をされてしまいます。

 ついには、食堂からも追い出されてしまい、食事が出来なくされてしまいました…。


 ステラウィッチ学園を去り、家に帰る事も考えましたが、両親の期待に背く事になってしまいます。

 父のお役に立てるようになるまでは、家に帰る事は出来ません。

 かと言って、食べなくては生きていけません。

 午後の授業が始まってから食堂に行き、食べさせて貰えないかお願いしに行かなくてはなりません。

 午後の授業が受けられなくなってしまいますが、仕方ありません。

 そう思っていた所に、部屋に食事が届けられました。


 食事を持って来てくれたのは食堂で働いている女の子で、日焼けをしていて目立っていたので僕もよく覚えています。

 それに小柄なのに胸が大きく、日焼けさえしていなければ、誰かが専属使用人として雇っていたのかも知れません。

 ステラウィッチ学園には使用人を連れて来る事は出来ません。

 ですが、ここで雇う事が可能ですので、僕も一人位雇おうかとも考えていました。

 僕の事を気に掛けて食事を運んで来てくれるような優しい彼女なら、僕の専属使用人として雇いたいと思いました。

 しかし、彼女は僕の食事が終わると早々に去っていきました。

 せめて名前でも教えて貰えればと思ったのですが、非常に残念です。


 この日から彼女は、昼食と夕食を僕の部屋まで運んで来てくれるようになりました。

 だけど彼女は必要最低限の会話しかしてくれず、使用人契約の話をする機会がありません。

 食事を運んで来て貰えるだけでもありがたい事なので、今はそれで我慢するしかありません。

 そんな事より、彼女の厚意を無駄にしない為にも、僕は勉学により励まなくてはなりません!


「無能がいくら勉強した所で、無駄だと分からないのか?」

「魔法が使えない奴がいくら勉強した所で、貴族としてやっていけないだろ」

「そうそう、貴族の面汚しめ!」

 僕が勉強しようとしても、周りの人達が邪魔をして来て勉強になりません…。

 この人達が言う通り、僕は貴族として大きな欠陥を持っています。

 それは魔法です…。

 僕の両親や妹は、当然のように魔法が使えます。

 弟はまだ幼いので使ってはいませんが、恐らく魔法を使える事だと思います。


 貴族にとって魔法とは、使えて当たり前の事なのです。

 両親はここの教員に習えば、僕も魔法が使えるようになると言ってくれましたが、教えどうり行っても魔法が発動する事はありませんでした。

 平民にも魔法使いはいますので、魔法が使える事が貴族なのだと言う事は無いのですが、魔法が使えない貴族と言うのは聞いた事がありません。

 だから僕は皆から貴族では無いと言われ、この様ないじめを受けているのです…。


 僕も何とかして魔法が使えるようにならないかと、学院の図書館で様々な文献を読み漁り色々試しては見たけれど駄目でした。

 それならばと、僕は授業が終わった後で大魔法使いイドリーの所を尋ね、魔法を使えるようになれないかと聞いて見ました。

 大魔法使いイドリーは宮廷魔導士を勤めた事のある大魔法使いで、今は引退して後継を育成するためにステラウィッチ学園来ています。

 彼ならば、様々な魔法使いを見て来ているでしょうし、僕が魔法を使えない理由も分かるのでは無いかと思います。


「そうじゃな、儂が教えればどんな者であろうとも魔法を使えるようになるじゃろ」

「では是非、僕に魔法を教えてください!」

「だが、何事にも例外があるのじゃよ。儂も魔法が使えない者を何人か見て来ておる。

 お主はその例外に当たると思うのじゃよ」

「例外…僕が…」

「一つ尋ねるが、お主は強力な能力を持っておるのでは無いか?」

「えっ、あっ、それは…」

「能力を教えろと言っておるのでは無いのじゃよ。人の持つ能力は様様だが、ごく稀に強力な能力を持った者がおる。

 儂の知る限り、その者達は魔法が使えないのじゃよ。

 理由は想像するしか無いのじゃが、能力に己の魔力のほどんどを持って行かれ、魔法に使う魔力が残って無いのでは無いかとおもっておる」

「そうですか…」

 大魔法使いイドリーは、僕が魔法を使えない理由が能力にあると教えてくれました…。

 僕はそれを聞いて、絶望するしかありませんでした…。

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