第四十八話 授業
「イコフは何の授業を受けているんだ?」
「俺様はハンターを目指しているから、剣術の授業を受けているぜ。それと魔法の授業も受ける予定だ」
「魔法か、それは俺も受けて見たいな」
「そうだろ!魔法が使えると俺様はもっと強くなれるはずだ!」
「おいらも魔法使って見たい!」
イコフとは仕事を一緒にした事で仲良くなり、気軽にステラウィッチ学園の事を話せるようになっていた。
今は冬前で、一番生徒の数が多い時期なんだそうだ。
ここに来れば住む場所も食事も仕事もあるので、仕事が少なくなるこの時期にここへ来る者も多いと言う事だった。
イコフもその一人で、毎年春迄ここに仕事をしに来ていて、剣術はついでに習う感じらしい。
もう少し時期が遅ければ、満員でここに入れなかった可能性もあったみたいで、運が良かった。
食事が終わり、イコフと別れて授業を受けるためにケルベロス棟に向かって行った。
「レフィー!」
ケルベロス棟に向かっている途中でミュリエルが駆け寄って来て、そのまま私に抱き付いて来た。
ミュリエルが普段からやっている行動なので驚きはしないが、防具を身に着けていない状況で抱き付かれるのは刺激が強すぎる…。
それに、周囲の視線も気になるので、ミュリエルにはすぐに離れて貰う事にした。
「ミュール、離れてくれ」
「嫌っ!もう少しこうしていたい!」
「駄目だ、授業に遅れてしまう」
少し強引にミュリエルを引き剥がすと、ミュリエルが悲しそうな表情を見せていた…。
少し心が痛かったが、授業に遅れる事は出来ない。
代わりに、ミュリエルと手を繋いでやると笑顔になってくれたので、今はこれで我慢して貰う事にした。
「あ…あの…」
歩き出そうとしていると、後ろからか細く消えるな声が聞こえて来たので振り向いて見ると、そこには地味目の少女が立っていた。
少女と視線が合うと少女は一瞬笑顔になったけれど、すぐに顔が赤くなって俯いてしまっていた。
少女とは初対面だとは思うが…。
「俺に何か用か?」
「あ…いえ…その…」
「レフィー、この子はシャリエットと言って、あたいと同部屋になった人なんだ」
「そうか、ミュールが世話になっているみたいで、これからもよろしく頼む」
「あ…は…はい…」
恥ずかしがり屋なのか、私の顔を見て話しをしてくれないが、ミュリエルと同室だと言うのであれば仲良くしていた方が良いだろう。
しかし、ここで立ち話をしていると授業に遅れてしまう。
シャリエットには悪いが、先を急がせて貰う事にした。
どうやらシャリエットも私達と同じ授業を受けるみたいで、ケルベロス棟までついて来た。
ケルベロス棟の三階へと上がり、教室に入ろうとした所で鐘が一回鳴り響いて来た。
「授業を受ける板を見せてください」
教室を入ってすぐの所に眼鏡をかけたお姉さんが座っていて、そこで授業を受ける為の板を回収していた。
私達は眼鏡をかけたお姉さんに板を渡すと、空いている席に座る様に言われたので、前の方の空いている席に四人並んで着席した。
それから暫くして鐘が二回鳴り、眼鏡をかけたお姉さんが教壇へと立った。
「皆さん、授業を始めますね」
どうやら彼女が先生の様だ。
統一した授業と言うのではなく、個別の進行状況に沿った授業になるみたいだ。
私達は最初なので、文字が書かれた紙を一枚渡された。
紙には基本となる文字が書かれているみたいで、一通り読んで教えてくれた。
基本となる文字は三十二文字で、覚えるのは難しくない。
日本語の様にひらがな、カタカナ、漢字の様な複雑な物ではなく、英語のアルファベットの様な感じなのだろう。
元々話す事は出来るのだから、一度読み方を覚えれば後は簡単だな。
「ミュール、シャド、分からない所はあるか?」
「この文字が分からない…」
「おいらは全部分からないよ…」
二人は一度では理解できなかったみたいで、かなり困った表情をしていた。
先生に聞く事も出来るが、先生は他の人の所に行って教えているので、私が説明してやった方が早いだろう。
二人に教えながら、ミュリエルの隣に座っているシャリエットの様子を見てみると、彼女も必死に文字を一つずつ指で追ってブツブツと文字を読んでいた。
「シャリエットも、分からない所があれば遠慮なく聞いてくれ」
「は…はい…えっと…これを教えてください…」
「分かった」
シャリエットは遠慮しながらも、紙をミュリエルの前に差し出しながら、分からない文字を指差してくれた。
私は三人に文字の読み方を教えつつ、自分でも間違いがないかと、先生が近くに来た際にもう一度確認した。
「はい、本日の授業はこれで終わりです。次もまた受けられる方はここで申し込んでから帰って下さいね」
授業は約二時間くらいで終わり、私達も次の授業の予約をしてから教室を後にした。
「ミュールはこれから仕事なのか?」
「うん、レフィーは違うの?」
「俺達は朝の仕事以外まだ決まってない。別の仕事がないか聞いてみる」
「そっか、レフィー、また明日…」
「頑張れよ!」
ミュリエルは私に一度抱き付いてから、シャリエットと一緒に仕事に向かって行った。
私はシャドルースを連れて寮へと戻り、仕事が無いかお婆さんに聞いてみる事にした。
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