第四章 ステラウィッチ学園
第四十四話 ストストール国へ入国
私達は無事にガイガル国を抜け、隣国のドルドルズ国へと入った。
ドルドルズ国でも一応警戒して、出来る限り町へは立ち寄る事はしなかった。
だけど、塩や調味料を買いに行かなくてはならないし、私達が追跡されているかの情報も欲しかった。
小さな町に立ち寄り、買い物ついでに店員から情報を聞き出してみた。
「ガイガル国の噂か?そうだな…奴隷が暴れて逃げ出したって話は聞いたが、それ以外は特に聞かないな」
「そうか、ありがとう」
私とミュリエルが追われているという情報は得られなかったが、油断はしない方が良いだろう。
今後も、出来る限り町へは寄らずに旅を続けて行こうと思う。
季節は夏から秋へと変わり、私達三人の露出している顔や手は真っ黒に日焼けしてしまっていた。
日焼けした事で、私達の素性が分からなくなったかもしれないのは良い事だろう。
女の子のミュリエルにとっては良い事では無いだろうが、冬頃には元通りの綺麗な肌に戻るだろうから我慢して欲しいと思う。
そして私達は、ストストール国へとやって来る事が出来た。
「レフィー、ストストール国には誰でも通える学園があるんだって、お客さんが言ってた」
「そうなのか」
ミュリエルが美女と美食の宿屋で働いている時に、そういう噂話を聞いたそうだ。
誰でも通える学園には興味があるし、私達三人は文字の読み書きを覚えなくては良い仕事に就けないだろう。
寄った町のお店で学園の事を聞いてみると、すぐに教えてくれた。
「それならこの国の中心地にあるレナーク町にあるよ。学園に通うにはお金が掛かるけれど、学園内で働きながら通う事も可能だからね」
「ありがとう」
この旅で所持金はかなり減ってしまったが、学園で働けるのなら通ってみたいものだ。
しかし、ある程度のお金は必要だろうし、レナーク町に行くまでの間に魔物でも狩ってお金を稼いでおいた方がよさそうだな。
魔物を狩り、立ち寄った町で魔物から取れた素材を売りながら旅を続け、レナーク町へとようやくたどり着く事が出来た。
「レイ兄、大きな町だね!おいら、こんなに大きな町に来たのは初めてだよ!」
「俺も初めてだ。はぐれないように手を繋いでおこう」
「「うん!」」
高い壁に囲まれた町中に入ると、町を真っすぐ縦に割った大通りの先が霞んで見えないくらいだ。
その大通りの中央を大小さまざまな馬車が行きかい、両端を大量の人達が行き来している。
私はミュリエル、シャドルースと手を繋ぎ、三人で町の中を歩いて行った。
広い町中を苦労しながら歩き回り、やっと泊まれる宿屋を見つける事が出来た。
「シャドはそっちのベッドを使ってくれ」
「レイ兄、おいらは床でも構わないよ!」
「俺とミュリエルは一緒に寝るから気にするな」
宿屋を見つけられたのは良かったが、三人部屋が空いてなくて二人部屋になってしまった。
旅の間も私とミュリエルは一緒に寝ていたし、あまり気にはしていなかったが、一緒のベッドに寝るとなると意味合いが違ってくるな…。
シャドルースの教育上よろしくないと思ったが、ミュリエルに一人で寝ろと言っても言う事を聞くはずもない。
今日の所は諦めるとして、今後は注意して行こうと思った。
「ステラウィッチ学園だね。大通りを真っすぐ進んで行けば、右側にあるからすぐに分かるよ」
宿屋の女将さんに聞くと、大雑把に教えてもらえた。
三人で宿屋から出かけて、女将さんに教えられたとおりに大通りを進んでいけば、確かに右側に学園らしき建物があった。
「レフィー、あそこかな?」
「そうかも、行って聞いてみよう」
右側と言われても建物はたくさん並んでいて、その中でひと際大きな建物があり、多くの人達がそこに入って行っているのを見かけた。
私は看板の文字が読めないので、入り口に立っていた人に聞いてみると、ステラウィッチ学園だと教えてくれた。
建物内に入ると、そこには横に長いカウンターがあり、そのに並ぶいくつもの列が出来ていた。
私達は比較的列の短い場所を選んで並び、一時間ほど待たされたところで私達の順番が回って来た…。
「ステラウィッチ学園へようこそ。こちらで学ぶのは初めてでしょうか?」
「あぁ、何もわからないので色々教えてくれ」
「畏まりました」
お姉さんは何も知らない私達に対して、親切丁寧に教えてくれた。
ステラウィッチ学園では、学問だけではなく、魔法や武術も教えてくれるそうだ。
授業は一回につき二時間で、午前と午後に二回ずつ、計四回の授業が行われる。
授業は完全な選択制で、好きな時間に好きな授業を受けられる。
ただし、前日に予約しておかないと授業を受けられないので、ここで予約を取るようにと言われた。
そして予約する時に、授業料を支払わなければならない。
授業料は一律で中銅貨五枚だそうだ。
ちょっと豪華な食事くらいの料金を払えば教えてもらえるのだから、安いと言った方が良いだろう。
この程度のお金なら十分支払えるし、二人と相談して授業を受けようと思う。
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