第四十二話 シャリエットの追跡

 レイフィースを追いかけて、バラルリーズ連邦国のガイガル国へとやって来た。

 こんなに長い距離を旅したのは初めてで色々大変だったけれど、何とかたどり着く事が出来た。

 レイフィースは無事に宿屋の仕事を見つけたみたいなので安心した。

 シャリーはと言うと、相変わらず薬草を集めてハンターギルドで売って稼いでいる。

 しかも、ガイガル国は戦争をしているせいで薬草の需要は高く、どんな薬草でも高く買い取って貰えて嬉しい。

 シャリーも顔を変えて、レイフィースが働いている宿屋に泊まっているけれど、なかなか会う機会が無くて残念に思う。


「ご注文は何にしますか?」

「そうね~、今日は野菜が多めの料理をお願いするわ~」

「少々お待ちください」

 ミュリエルの給仕も、最近ましになって来た。

 最初は見ていられないくらい酷かった…。

 でも、女将さんが助けていたし、お客さんも優しい人達ばかりでこの宿屋の雰囲気はとてもいい。

 それに、ここの料理はとても美味しい!

 つい食べ過ぎてしまいそうになるけれど、レイフィースに嫌われないためにも太ったりは出来ない。

 本当はお肉をいっぱい食べたいけれど、我慢が必要…。

 食べた分だけハンター活動で消費すればいいのだけれど、これから冬になるので薬草も少なくなるし、お金にも余裕があるから無理に仕事をする必要もない。


 冬が開けて春になった。

 冬場にあまり動かなかったせいで、太ってしまった…。

 シャリーの能力で太ったように見せてはいないけれど、このままではレイフィースの前に出て行けない。

 頑張ってハンターの仕事をして、やせようと思う。


 ある日、ハンターの仕事を終えて町に帰って来ると、レイフィースとミュリエルの二人が外を歩いている姿を見かけた。

 二人がこの時間に外にいるのは意外だったので、こっそり後をつけてみる事にした。

 二人は何か調べているみたいで、様子がおかしかった。

 さらに、二人は宿屋に戻らず、この町で危険だと言われる地域に消えて行った…。

 シャリーは危険だからそこには近寄れず、諦めて宿屋へと帰って行った。


「レイフィースとミュリエルかい?残念だけれど辞めていったよ」

 女将さんに尋ねると理由は教えてもらえなかったけれど、二人は宿屋の仕事を辞めて出て行ったという。

 でもその理由は、食事をしている時に聞こえてきた噂話で大体理解できた。


 誰がやったか分からないけれど、この町の町長が殺害されたらしく、町の警備隊で犯人の捜索をしている。

 その前に、危険地域に住む住人達を町長が捕らえたとの事で、犯人は危険地域に住む住人たちの誰かではないかと言う憶測も聞こえて来た。

 恐らく、犯人はレイフィースだと言うのは、急に仕事を辞めた事から分かったけれど、なぜ町長を殺さなければならなかったのかまでは分からない。

 あの優しいレイフィースがそんな悪事を働くとはどうしても思えず、女将さんの仕事が終わるのを見計らって聞いてみる事にした。


「私は二人の知人で二人を助けたいから、理由を知ってたら教えてくれないかしら~?」

「本当に知人なのかい?」

「そうよ~」

 女将さんは信じてくれなかったけれど、二人がどこから来たのか色々話したら信じて話してくれた。


「ここに来ていた子供達が町長に捕まってねぇ、二人は子供達を助けに行ったのよ。この事は絶対内緒よ!」

「もちろん誰にも言わないわ~」

 なるほど、それならレイフィースが町長を殺した理由も分かる。

 だけど、ここに戻って来ていた理由が分からない。

 それは、明日にでもレイフィースに会って聞いてみるしかないし、助けになってやる事が出来るかもしれない。

 そうすれば借りも二個目となり、ミュリエルもシャリーがレイフィースの傍に居て良いと言ってくれるかもしれない。

 シャリーは気持ちが高まってなかなか寝付けないでいると、外が少し騒々しくなっていた。

 気になってベッドから起き上がり、窓から外を見てみると、外には多くの人、いいえ、奴隷が歩いているのが見えた。

 もしかして、これもレイフィースがやったのかも?

 そう思い、シャリーは荷物を急いでまとめて宿屋から出て行った。


 奴隷達の進んでいる方向に先回りをしてみると、やっぱり先頭にいたのはレイフィースとミュリエルだった。

 シャリーは奴隷達の事は可哀そうだと思って見ていたけれど、解放してあげようとは思っても見なかった…。

 ううん、普通の人は危険を冒してまで見ず知らずの他人、ましてや奴隷を助けようとは思わない。

 優しいレイフィースだから出来る事で、誰にも真似出来るものではない。

 シャリーはますますレイフィースの事が好きになり、絶対レイフィースの傍にいられるようになろうと心に決めた!

 今回、シャリーの手助けは必要ないみたいなので借りを作る事は出来なそうだけれど、いずれ必ず助ける機会が出て来るだろうから、これからもレイフィースを追いかけ続けようと思う。

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