第四十一話 シャドルース

「レフィー、これからどうするの?」

「そうだな、ガイガル国にはいられなくなったから、東のドルドルズ国を抜けた先にあるストストール国へと行こうと考えている」

「バラリーズ連邦国から出ないんだ?」

「それも考えたが、今からの移動を考えれば、バラリーズ連邦国を出る頃には冬になってしまうだろう。

 冬の移動は出来るだけ避けたい」

「うん、そうだね…」

 今の時期は春から夏に変わる所で、冬前にはどこかの国に定住したい。

 ガイガル国の東隣のドルドルズ国だと追手を掛けられるかもしれないが、更に東隣のストストール国だと追ってもかからないだろうと考えての事だ。

 勿論、そこまで無事にたどり着ければの話だが、出来るだけ人目を避けて速やかに移動しなくてはならないだろう。

 私とミュリエルは長旅には慣れているが、シャドルースは慣れていない。

 ここまで来る際にも、何度か体調を崩して魔族から魔法で治療を受けていたりもする。

 無理はさせられないが、そう言ってもいられない…。


「寂しくなったね」

「そうだな、だが、彼らは故郷に帰って行ったんだ。俺達も新たな故郷を探しに行こう」

「うん、そうだね!」

「あたいは、レフィーが傍に居てくれればどこでもいい」

「あっ、ミュリ姉ずるいよ!おいらもレイ兄が居てくれればどこでもいいよ!」

「そうか、三人が安心して暮らせるところを探しに行こう!」

 私は二人の頭を撫でてから、東へと移動を開始した。



≪シャドルース視点≫

 おいらは親に捨てられ、同じような仲間達と共に暮らしていた。

 生活は大変だったけれど、仲間達との生活は楽しかった。

 食事は皆で分け合って食べ、寒い夜は体を寄せ合って眠り、昼間は皆で遊んだりもした。

 遊ぶ余裕が出たのは、食事に困らないようになってからだけどね。


 ある日、いつものように残飯を貰える場所に皆で行ってみると、凄い量の食事が用意されていて驚いた。


「お兄ちゃん、これ食べていいの?」

「全部食べていいぞ、喧嘩しないようにな!」

「「「うん、お兄ちゃんありがとうー!」」」

 この日から朝と晩の二回、お腹いっぱいになるまで食べさせてもらえるようになった。

 そればかりか服とかも貰ったし、おいらたちの生活は以前とは比べ物にならないくらい楽になった。

 皆、お兄ちゃんに感謝しているし、働けるようになったら恩返しをしようと話し合って決めていた。

 お兄ちゃんのおかげで寒い冬も無事に越す事が出来て、温かい春になった。

 皆で働ける場所が無いか探しに行こうと相談していた所に、悲劇が起こった。


「放せ!放してくれよ!おいらたちは何も悪い事はしてないよ!」

 大勢の大人の人達に取り囲まれ、おいらたちは全員捕まってしまい、鉄格子の馬車に無理やり押し込められて何処かに連れていかれてしまった…。

 おいらたちは身を寄せ合い、どんなことがあっても皆で逃げ出すと誓い合った。

 大きな屋敷の前へと連れて来られ、おいらたちは馬車から下ろされた。

 おいらたちを囲うように武器を持った大人達がいて、逃げ出すことは出来なかった。

 屋敷の中に連れていかれ、そこの地下へと放り込まれた…。


「なにここ…」

「怖い…」

「皆離れるなよ!」

 その場所には様々な武器が壁に掛けられていて、不気味な光景だった。

 おいらたちは皆で固まり、武器を手に取るか相談していた。

 そうしていた所、おいらたちの近くに住んでいた人達も連れられてきた。

 その人たちは困惑しつつも、武器を手に取っていた。

 おいらたちでも使えるような武器を探し、身を守る事にした。

 それからしばらくして、立派な服を着たおじさんが地下へと入って来た。


「ふむ、武器を手にしているな。貴様たちは私への反逆罪で処刑する!」

「ふざけるな!」

 武器を取ったから処刑される!?

 おいらたちは慌てて武器を捨てたけれど、他の人達はその武器で立派な服を着たおじさんに斬りかかって行った!

 おじさんも武器を構え、向かってきた人たちを次々と斬り捨てて行っていた…。


「残りはお前らだけだ」

「おいらたちは何も悪い事はしてない!」

「お前たちの存在そのものが、町にとっての悪なのだ。死にたくなければ抵抗して見せよ!」

 正直勝てる見込みは無いし、とても怖かったけれど、何もしなくても他の人と同じように殺されると言う事だけは分かった。

 おいらたちは捨てた武器を拾って、皆で一斉におじさんに襲い掛かった!

 …。

 おいらたちは斬り刻まれ、全員倒されてしまった…。

 斬られた所が痛いし、皆も痛みに泣き叫んでいる…。

 おじさんは痛みに泣き叫ぶおいらたちを蹴り飛ばし、踏みつけ、串刺しにした…。

 おいらは死にたくないと思いながら、そこで意識を失った…。


 おいらが目を覚ますと、食事を食べさせてくれた兄ちゃんが目の前にいてくれて、泣き叫ぶおいらを強く抱きしめてくれた。

 どうやらおいらだけ助かったみたいで、他の皆は死んでしまったみたいだ…。

 皆に謝りつつ、皆の分まで兄ちゃんに恩返しをすると、皆に誓った…。

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