第三十二話 子供達の救出 その二

 姿勢を低くし、矢の届く所まで近づいて行く。

 慎重に狙いを定め、門の前に立っている敵に矢を放ち、すぐさま次の矢をつがえて二人目の敵に矢を放った!


「走るぞ!」

「うん!」

 矢は命中して二人とも倒れたが、矢が当たったくらいでは死んでいないだろう。

 仲間を呼ばれる前に、一気に近づいて槍を突き刺し、止めを刺した!

 倒した二人のポケットから門の鍵を探し出し、その鍵を鍵穴差し込んで回すとガチャリという音と共に門の鍵が開いた。

 金属製の重い門を押すと、ギギギと言う大きな音が鳴り響きながら門が開いて行った。


「なぜ門を開けた!」

「おい、ちょっと様子を見てこい!」

 屋敷の方にいた者が門が開いた事に気づき、剣を構えて駆けつけてきている。

 ここからは正面切って戦うしかない!

 相手も問答無用で斬りかかってこようとしているので、私としてもやりやすい。


「敵だ!敵襲だ!」

 一人倒した所で仲間を呼ばれてしまったが、想定内だ。


「ミュール、相手は魔物だと思え!いつも通り俺の後ろからハルバードを振り下ろすだけでいい!それ以外の事は考えるな!」

「うん、分かった」

 ミュリエルに人を殺させたくはないが、そう言っていられる状況ではない。

 ミュリエルを置いて来れなかった以上、戦ってもらうしかない。

 相手は武装した四人で能力も不明で、そのうちの一人が魔法をこちらに向けて撃って来た!


「右!右!左!」

 屋敷に向かって走りながら、飛んできた魔法を躱していく。

 私の後ろを走っているミュリエルも、魔物との戦いによってこのあたりは慣れたもので、私の動きに合わせて飛んで来た魔法を躱している。

 先ずは一人目!

 相手が私の右手の方に動くように、左側に槍を突き出す。

 次の瞬間、私の右後方からブンッと言う風切り音と共に、ミュリエルのハルバードが力強く振り下ろされた!

 相手はミュリエルのハルバードをとっさに剣で受け止めたが、ミュリエルのハルバードは剣を破壊しながら相手を斬りつけ、倒されていた。

 私は、ミュリエルが倒した相手の首に槍を突き刺して止めを刺す!


「貰った!」

「ぐっ!」

 その隙をついて、二人目が私に斬りかかって来て、私の左肩の骨に達するくらい剣がめり込んでいた。

 私は痛む左手で、めり込んだままの剣を体に押し付けて動かないようにした!


「貴様何を!?」

 相手は私の行動に驚いたまま、ミュリエルのハルバードの餌食となった。


「女だ!女の方を注意しろ!」

 残りの二人が、ミュリエルに警戒し始めた。

 ミュリエルの破壊力は常人には真似できるものでは無い物で、その破壊力を警戒するのは当然だ。

 私が敵であっても、ミュリエルの方を警戒する。

 最初に魔法を撃ってきた相手が、位置を変えてミュリエルに魔法を撃ちこんできた!

 この距離では魔法を躱すことは出来ないため、私が身を挺してミュリエルを守る!

 魔法は尖った石であったため、私の体にいくつも突き刺さって激しい痛みが襲い掛かってくる!

 だが、私の体はそれくらいで動かなくなったりはしない!

 もう一人の敵がミュリエルに剣で迫って来ているのを、槍で牽制する!


「やぁっ!」

 敵の動きが一瞬止まった隙をついて、ミュリエルがハルバードを振り下ろし敵を倒す。


「く、来るなぁ!」

 最後の敵が私に向け魔法を撃ち出しながら逃げ出そうとしているが、私は魔法を食らいながら間合いを詰め槍を突き刺して倒した!

 周りを確認するが、表にいる敵はもういそうにない。

 私は、槍を杖代わりにして呼吸を整える事にした…。


「レフィー、大丈夫?」

「あぁ、少し魔法を食らいすぎたが大丈夫だ。ミュール、体に突き刺さっているのを抜いてくれ」

「う、うん…引き抜くよ!」

 私は歯を食いしばり、いくつも体に突き刺さったままの魔法をミュリエルに抜いてもらった。

 ミュリエルが魔法を抜くたびに激痛と出血を伴うが、痛みは一瞬の事だし出血もすぐに治まる。

 神様から与えられた呪いの能力だが、こういう時は便利で助かる…。


「ミュールは大丈夫か?」

「うん、大丈夫、行けるよ!」

「よし、屋敷の中に入るが、室内でハルバードを振り回すのは難しいから、突くだけにしておけ」

「うん、わかった!」

「行くぞ!」

 私も室内での戦闘に備えて槍を短めに持ち、屋敷の扉を勢いよく開け放った!


「##########!!!」

 広い玄関ホールには奴隷の魔族が一人いて、私達が入ってきた事で悲鳴のような声を上げていた。

 残念な事に、魔族の言葉は私にはわからない。

 魔族の奴隷を放置して、警戒しながら廊下を奥へと進んでいく!

 廊下で見かけるのは魔族やドワーフの奴隷ばかりで、何か言っているが私には理解できない。


「誰か言葉の解る者はいないか!」

 見かけた奴隷たちに声を掛けて行くと、長い白髪の髭を生やしたドワーフが私の前に出てくれた。


「わしが話せる」

「ここに捕らえられた人達が連れてこられたと思うが、どこにいるか知らないか?」

「そいつらは地下だ。わしらは抵抗せぬから危害を加えないでくれ」

「敵対しなければ手出しはしない。地下の場所を教えてくれ」

「こっちだ」

 長い白髪の髭を生やしたドワーフの後に続いて、廊下を奥へと進んでいった。

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