第二十四話 ミュリエルの不安

「上手く倒せるようになったな!」

「えへへ…」

 レイフィースに手伝ってもらいながらだけれど、魔物を確実に倒せるようになってきた。

 でも、一人だと魔物は怖いので、横にレイフィースがいてくれないと無理かな。

 レイフィースの役に立ちたいけれど、ハンターの仕事はあたいには向いていないと思う…。

 だからと言って、レイフィースと一緒に行うハンターの仕事は大好きかな。

 レイフィースは、二人っきりだとあたいを思いっきり甘やかしてくれるし、とても優しくしてくれる。

 あたいがどんなわがまま言っても、嫌な顔一つせずに聞いてくれる理想的な男性で、絶対に手放したくはない!

 だけど、優しすぎるしお金も稼げるから、他の女性にも人気がある。


「レイフィース、お願いだから私の所に来て~」

「こっちがいいわよ!」

「私がレイフィースの所に行ってもいいよ!」

 ハンターギルドに行くと、レイフィースは毎回女性ハンター達に囲まれる。

 あたいが女性ハンター達を睨んでも、お構いなしにレイフィースを口説こうとしてくる。

 暴力を振るえば追い払うことは出来るかもしれないけれど、相手はハンターだからあたいより強いかもしれない。

 それに、ハンターギルド内で問題を起こせばハンターを続けられなくなるので、それは出来ない。


「すまない、俺達は誰とも組む予定はない」

 レイフィースは冷たく言い放って、女性達から離れていく。

 その行為自体も、女性ハンター達のやる気を奮い起こさせる原因になっている。

 男性ハンター達からは、自分たちに女性が振り向かないと一部を除いて嫌われている。

 そんな中、レイフィースが気を許す女性が一人だけいる。

 名前はシャリーと言って四十過ぎのおばさんだけれど、レイフィースは良い人だと言って親しげに話している。

 あたいも悪い人ではないと思うけれど、レイフィースに近づく女は皆あたいの敵!

 だけど、その敵シャリーに、ある出来事で助けられることになってしまった…。


 その出来事とは、レイフィースがハンター殺しの犯人として疑われてた事。

 勿論、レイフィースはそんな事をやっていないのは、ずっと一緒にいたあたいがよく知っている。

 だけど、レイフィースとあたいがこのハンターギルドに来てから起こっている事件だと言われ、更にレイフィースはその実力があって男性ハンター達からも嫌われていたから、皆からも犯人ではないかと言われた。

 レイフィースは疑いを晴らすためにしばらく休んだのだけれど、それが逆に疑いを深める事になってしまった。

 何故なら、犯人は最初から罪をレイフィースに着せるつもりだったから。


 そして、レイフィースはその犯人達を見つけて戦っている。

 あたいも一緒に戦いたかったけれど、レイフィースの足手まといになるのは目に見えている。

 それに、人を殺した犯人達がレイフィースを見てわらっている表情が、とても恐ろしかった…。

 あたいは声も出せずに、レイフィースが戦いで傷ついて行くのを見ている事しかできなかった。


 犯人達を倒したレイフィースは血まみれで、死んでしまうのではないかと心配になったけど、レイフィースの能力は不死で、どんなことがあっても死なないと教えてくれた。

 あたいはレイフィースが死なない事に安心すると同時に、レイフィースの心が壊れないか非常に心配になった。

 だって、レイフィースの表情はひどく落ち込んでいて、とても元気がなかったから…。

 でも翌日は、いつもの元気なレイフィースに戻っていたから、その時は安心した。


 シャリーに現場を見られたのだけれど、シャリーはレイフィースを助けようとしてくれた。

 あたいもシャリーには助けられたし、シャリーは良い人だと思うけれど…。

 レイフィースに近寄るのだけは許さない!

 だから、しっかりと釘をさしておく必要がある!

 シャリーと別れる際に、二人っきりで話をすることにした。


「シャリー、レフィーは私の物だから取らないで!」

「分かっているわ~、でも~、レイフィースはいい男だから、他の女が必ず寄って来ると思うわよ~」

「そ、それは分かってるし、あたいが近づけさせないようにする!」

「私もミュリエルから取ろうとは考えていないわ~。だけど~、私は二番目でいいと思っているし~、助けてあげたのだからいいわよね~?」

「駄目!助けて貰ったのは感謝しているけれど!レフィーは私だけの物!」

「意外とケチね~。まぁ、今はそれでいいわ~。次に会った時には二番目に入れてもらえるように、努力をするだけよ~。また会いましょうね~」

「二度と会わない!」

 シャリーは、にこやかに手を振りながら去って行った…。

 シャリーの言った通り、レイフィースはあたいなんかにも優しくしてくれるいい人だ。

 あたい一人でレイフィースに近寄ってくる女を排除できる自信は無いけれど、頑張るしかない!

 でも、二番目でいいならと言う言葉に、少しだけ揺らいでしまった…。

 シャリーとならうまくやれそうな気もするし、そういう未来があるのかもしれないと思うけれど、レイフィースは誰にも渡したくは無いと、改めて強く思った!

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