第二十三話 シャリエット

 シャリーは貧乏な農家の八人家族の四女で、貧しい生活をして来た。

 本名はシャリエットだけれど、家族からシャリーと呼ばれているうちに、シャリーの名前はシャリーになっちゃった。

 名前なんてどうでもいいよね。

 シャリーが十三歳になった時に貧しさに耐え切れず、両親の反対を押し切って家を出て行った。

 シャリーには優れた変身能力があるから、一人でもお金を稼いで行ける。

 そう考えて近くの町に行き、早速能力を使ってみた。


 大人の美人の女性で胸も大きめにして町を歩けば、男が沢山寄って来てくれた。

 ご飯も食べさせて貰えたし、仕事も紹介して貰えた!

 だけど、その仕事は男性に対して体を売る仕事で、シャリーはその場から全力で逃げ出した。

 危なかった…。

 美人は駄目だと分かり、胸の大きさはそのままで顔を少し不細工にしてみた。


「じゃまだ、どきな!」

 胸は見て貰えるけれど、顔を見るなり男は遠ざかって行ってしまった。

 やっぱり顔なんだ…。

 男の人が寄ってくるくらいの顔にして、お母さんより年を取っている見た目にしてみた。

 話し方も年相応に変えてみたら、男の人達は色々親切にしてくれたし、危険な事も少なくなった。

 しつこく誘って来る男の人もいたけれど、夫が居ると言えば去って行ってくれた。

 だけど問題は、仕事が無い事だった。

 見た目の年齢的にお店とかでは働かせては貰えず、お金を稼ぐために仕方なく誰でもなれるハンターになった。


 ハンターになったのは良いけれど、シャリーは魔物と戦う事はなんて出来ない。

 能力を他の人には絶対知られたくは無いから、他の人と組む事も出来ない。

 シャリーが一人で出来るのは、薬草を集めるくらい。

 でも、それが良かった。

 シャリーの能力は大きさは変えられないけれど、どんな物にも変身できる。

 例えば石に変身すれば魔物も近寄っては来ないし、噛みつかれたとしても痛くも無い。

 そのまま眠る事も出来る。

 移動する時は動物や魔物に変われば、早く移動する事も出来る。

 残念な事に、鳥の姿に変わる事は出来るけれど、空を飛ぶ事は出来なかった。

 シャリーは能力を有効に使い、貴重な薬草を採って来て高く買い取ってもらう事が出来た。

 ハンターじゃない様な気もするけれど、ハンターの仕事の中に薬草の採取もあるし、貴重な薬草は皆の役に立つ。


 そうしてハンターを一年続け、シャリーは銀三級まで上がった。

 これ以上は魔物を倒さないと上がらないけれど、シャリーはお金が稼げれば位なんて関係なかった。

 シャリーは十四歳となり、そろそろ結婚相手を見つけないといけないのだけれど…。

 シャリーの見た目は四十歳を超えていて、誰も言い寄っては来てくれない。

 見た目を若くて美人にすれば、言い寄って来る男が来るのは分かっているけど、誰でも良いって事では無い。

 やっぱり頼りがいがあって、格好いい男が好み。

 お金を持っていればさらに良いけれど、シャリーがお金を稼ぐ事が出来るから、お金にはそこまでこだわらない。


 そんな時出会ったのが、少し暗い感じのするレイフィースと言う名の男の人。

 顔は好みだし、強くて頼りがいがある。

 一つだけ難点があるとすれば、既に彼女がいる事くらい。

 レイフィースは稼ぎもいいみたいだし、二人目でも問題無いはず。

 問題なのはシャリーの方で、レイフィースに素顔を見せて告白する勇気が無い。

 美人になって申し込めば受け入れて貰えると思うけれど、本当のシャリーを知ったら嫌われるに違いないからそれは出来ない。

 悩んだ挙句、シャリーは隠れてこっそりレイフィースの後を追いかけ、レイフィースが危機に遭った時に助けてあげて恩を売る事にした。

 だけど、レイフィースはやっぱり強くて、危機に遭いそうになる事は無かった。

 それでも追跡を続け、やっとレイフィースを助けてやれそうな出来事が起こった。


 レイフィースが、ハンター殺しをやっていると疑われている。

 シャリーはずっとレイフィースの後を追いかけていたから、レイフィースがそんな事をやっていない事は知っている。

 ハンター達から話を聞いてみると、どうやらその現場を見たと言うハンターがいるらしいことが分かった。

 更に詳しく調べてみると、話の出所は銀一級のハンター達だと言うのが分かった。

 彼らは、レイフィースがこのハンターギルドに来る半年前からここで活動していて他のハンターに親切にしていたし、シャリーもご飯を奢って貰った事もある。

 彼らの言う事であれば、誰でも信じてしまうだろう。

 だから、シャリーやレイフィースが何を言おうとも、疑いを晴らす事は出来ないと思う。

 シャリーが助けてあげられるいい機会だったのに、役に立てずに申し訳なく思った。


 だけど、レイフィースは強く、シャリーの助けなど必要なく問題を解決してしまった。

 あの解決方法はレイフィースにしか出来ないし、自分の事より恋人の事を心配する人柄にも改めて好きになった。

 借りは一つ作れたけれど、シャリーの素顔を見せて結婚を申し込むには足りない気がする…。

 これからもレイフィースの後を追いかけ、更に借りを作って行って結婚して貰おうと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る