第二十一話 ハンター殺しの犯人

 翌朝、私とミュリエルは現場に戻り、魔物に食い散らかされた死体からバッチを集めて行った。


「ねぇレフィー、こいつら悪い奴らなんだから、持って帰る必要ない!」

「俺もそう思うが、ハンターギルドに報告するためには必要だからな」

 私が疑われているので、バッチを持ち帰って説明しなくてはならない。

 襲われたハンター達を助けられなかったのは残念だが、私もミュリエルを守らないといけないから、そこまでの危険をおかすことは出来なかった。

 助けていれば罰を一つくらい減らせたかもしれないが、無理に罰を減らす必要はないし、転生しない方が私は救われると思っている。

 私の事より、今はミュリエルの安全を第一に考えて行かなくてはならない。

 バッチを集め終え、イズストル町へ帰る事にした。

 ゲイザーは狩っていないが、のんきに魔物を狩っている状況でもない。

 さっさと私にかけられた疑惑を晴らし、堂々と魔物狩りを続けたい所だ。


「誰だ!?」

「あたくしよ~」

「なんだ、シャリーさんか、驚かさないでくれ」

「ごめんなさいね~」

 帰り道の草原を歩いていると、何もいなかったはずの草陰から突如としてシャリーが現れた。

 一人でハンターとして活動しているから、存在を消したりできる能力なのだろう。


「昨夜の事は災難だったわね~」

「っ!?見ていたのか?」

「えぇ~、気になっていたから後をつけていたのよ~」

「そうか…それで、俺の無実を証明してくれるのか?」

「そうしてあげたいのは山々だけれど~、あたくしが言った所で聞いてくれないと思うのよ~?」

「それはどうしてだ?」

「ハンター殺しをしていた銀一級の彼らだけれど~、ハンターギルド内では誰にでも親切だったのよ~。

 レイフィースも親切にしてもらったでしょう~?」

「そうだな…」

「だから~、皆レイフィースの話を聞いてくれないと思うのよね~」

「確かにそうかもな…」

 銀一級のハンターはシャリーの言う通り、他のハンター達にとても親切だったし、私にも無料で情報を与えてくれた。

 ミュリエルを口説こうともしていなかったし、紳士的でもあった。

 そのハンターを、私がハンター殺しの犯人だといっても信じてもらえないかも知れない。

 だけど、ここで逃げたりしたら、私がハンター殺しの犯人にされてしまうのは間違いない。


「やはり報告に行く」

「処刑されるかもしれないわよ~?」

「それは困るな…」

 ハンターギルドに入る時に、仲間殺しは死刑だと説明を受けていた。

 ハンターギルドが死刑にするのではなく、イズストル町を含む地域を治める貴族に対してハンターギルドが処罰対象者を申請し、貴族が許可を出せば処罰が与えられる。

 ハンターギルドは信頼されていて申請はほぼ通るらしいから、事実上ハンターギルドが処罰の判断をすることになっている。

 つまり、私の訴えが信じてもらえなければ、私は処刑されることになるだろう。

 逃げても犯人とされて、この国ではハンターとして仕事が出来ず、訴えても犯人として処刑される。

 つんでいる状況だ…。

 ミュリエルを巻き込まないためには、他の国に逃れるしかないのか…。


「手伝ってあげてもいいわよ~」

「本当か!?」

「えぇ~、あまりにも可哀そうだしね~」

 私が困っていると、シャリーが手伝ってくれると言ってくれた。

 シャリーは昨夜の事を見られているので、俺の能力に関しても知っているのだろう。

 それならばと、シャリーにミュリエルの事を守ってくれるようお願いした。


「レフィー!あたいはレフィーと離れたくない!」

「ミュール、話を聞いてくれ、俺はたとえ処刑されたとしても死しはしない。

 だから、その後でまた合流しよう」

「本当に死なない?あたいを一人にしない?」

「あぁ、大丈夫だ」

「待ってる…」

 ミュリエルは私をぎゅっと抱きしめ、しばらく離してはくれなかった…。


「シャリーさん、ミュールをお願いします」

「宿屋の中でかくまっておくから安心してね~」

 ミュリエルをシャリーに預け、私は一人でイズストル町のハンターギルドへと戻って来た。

 バッチを提示し、昨日起こった事を説明したが、シャリーの言う通り私の言葉など信じてはもらえなかった…。

 ミュリエルの事を深く追及されなかったのは良かったが、あまりにも理不尽すぎるだろう。

 嘆いても結果は変わらず、私はそのまま町の警備兵に捕まり、牢屋へと放り込まれた。


 そして二日後、早々に私は処刑されることになった。

 処刑は町の広場で、皆が見ている前で行われた。

 人々は私に罵声を浴びせ、中には石を投げてくる者もいたりした。

 弁明の機会は与えられず、私は後ろ手に縛られたまま槍を突き刺されて死んだ。

 いや、呪われた能力によって死んではいないが、槍を突き刺されれば激痛に苦しむことになるし血も大量に出る。

 死の苦しみを受けるのも罪だというのであれば、本当に呪われた能力だとつくづく思う…。

 私はゴミの様に荷車に投げ飛ばされ、町のゴミ捨て場へと投棄された。

 そのまま火を点けられ、私はゴミと一緒に燃やされることとなった…。

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