第十八話 ハンター活動 その四

 イズストル町でハンターとして活動を始めてから二か月が過ぎた。

 ゲイザーを狩り続けて、お金もかなり貯まって来ている。

 おかげでゲイザー狩りとして有名になってしまったが、それは悪い事では無い。

 他のハンターからゲイザーの情報を貰えるし、今回もその情報を元にゲイザーを狩って来た。


「情報料だ」

「助かる」

 当然、情報もただではない。

 情報通りの場所にゲイザーがいれば、情報料を支払わなければならない。

 無料で教えてくれるハンターもいるが、それは稀な事だ。


「北側にある山の裏側にゲイザーがいた。情報量はいらないから倒してくれないか?」

「分かった」

 銀一級のハンターからの情報は正確だし、情報量もいらない。

 彼らからすれば、ゲイザーの情報料は大した金額ではない。

 それより、邪魔になるゲイザーを私に倒して貰えれば、余計な手間が省けると言う事だ。

 私にはゲイザーの能力が効かないが、他のハンターはそうではない。

 ゲイザーの弱点は目で、遠くから弓矢か魔法で目をつぶせば簡単に倒せる魔物だ。

 だけど、目をつぶしてしまうと、買い取り額がほとんど無くなる厄介な魔物だ。

 銀一級のハンターなら簡単に倒せそうだが、万が一麻痺させられれば、銀一級のハンターでも無事ではすまされない。

 それで、邪魔なゲイザーを私に倒させるために、無料で情報をくれると言う事だ。


「雨か…雨宿りできる場所を探そう」

「うん」

 鞄から外套を取り出し、ミュリエルにも着せてやった。

 雨季に入ってはいたが、出かける時晴れていたから降らないと思っていたのだがな…。

 仕方なく雨宿りが出来る場所を探し、雨が止むまでじっとしていることにした。

 雨が止んだのは二日後で、からりと晴れたいい天気となった。


「雨が上がっちゃった…」

 ミュリエルは雨が上がった事を、残念そうにしていた…。

 何故ならこの二日間、ミュリエルはずっと私に引っ付いて甘えていたからな。

 私としても悪い気はしないし、ミュリエルがいてくれて良かったと思っている。

 もし、ミュリエルがいなかったとすれば、私はここまで元気にハンターとして活動していなかった。

 生きていくために必要な最低限稼げれば良いと思っていただろうし、他人とも会話しようとは思わなかった。

 私の心は二度死んでいて、ミュリエルが傍に居なければ何もしないで過ごしていたのかもしれない…。

 神様から罰として与えられた使命をやらなければ、私は次の転生は無いと言われた。

 このところ、転生しない方が良いと考え始めてきている。

 つまり、もう二度とあの苦しみに合う事は無くなるのだ。

 それは私にとっては救いであり、私が望むべき道ではないのか…。

 使命はどうでもいいけれど、ミュリエルとは約束したので頑張らなくてはならない。

 今は、ミュリエルだけが私の生き甲斐になっている。

 想像もしたくないが、ミュリエルが亡くなったら次こそは本当に私の心は死んでしまい、私は寿命が来るまで死を待つだけの存在になるだろう。


 ゲイザーを狩り、雨がまた降りださないうちに帰路についていた所で、異変を見つけて立ち止まった。


「ミュール、ここで少し待っていてくれ」

「いや!あたいもついて行く!」

「それなら、目を瞑っていてくれ」

「分かった…」

 目を瞑ったミュリエルの手を引き、異変の場所へと向かっていった。

 そこには、魔物に倒され食い散らかされたハンター達の死体が転がっていた。

 私は黙祷もくとうし、ハンター達の死体からバッチを探して持ち帰ることにした。

 バッチを探している時に、死体に違和感を感じて詳しく調べた。

 このハンター達は魔物に倒されたのではなく、剣で切り殺された?

 雨が降った後だから、周囲に他の人の足跡は確認できないが、死体の傷や防具についた傷は、明らかに剣で斬られた跡だというのが分かった。

 バッチに書かれている名前は読めないが、顔には覚えがあった。

 男女二人ずつで組んでいるハンターで、私とミュリエルに仲間に入らないかと会うたびに誘って来ていた。

 少しでも話した事のある人が死んでいれば、どうしてもフォルガ村の事を思い出してしまう…。

 だが、ここで気持ちが落ち込まないのは、つないでいる手から感じるミュリエルの温かさがあるからだ。

 私は周囲を見渡し、他の人がいないか確認した後、急いでその場を後にした。


 ハンターギルドに帰りつき、受付でバッチを見せると、奥の部屋へと連れていかれた。

 ハンターギルドのギルド長が出てきて、私は剣で切り殺されたと思われることも正確に説明した。


「そうか、他にも何件か起こっていて、ハンターギルドでも調べている所だ。

 確認するが、お前が殺したんじゃないよな?」

「俺では無い。俺が殺す動機もないし、俺が四人を殺せるとでも?」

「ゲイザーを倒す技量があれば、四人を殺す事くらい出来るだろう」

「俺では無い!」

「分かった、信じよう」

 ギルド長に何故疑われたかは分からないが、私が殺してないと信じて貰えたと思う。

 私は部屋を出て、部屋の入り口で待っていたミュリエルを連れて宿屋へと帰って行った。

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