第十七話 ミュリエルのハンター活動

≪ミュリエル視点≫

 レイフィースと旅を続け、イズストル町へとたどり着いた。

 そこでレイフィースがお金を稼ぐ手段として選んだのは、ハンターだった。

 ハンターは危険な職業で、好き好んで選ぶ職業ではない。

 あたいもレイフィースと出会わなければ、決して選んだ職業ではない。

 だけど、レイフィースは強いし、旅の間に何回も魔物と戦って倒してきている。

 あたいもレイフィースがハンターになる事には反対しないし、あたいもレイフィースのように強くなってレイフィースの役に立ちたいと思った。

 それに、レイフィースの役に立たないと、いつかあたいはレイフィースから捨てられるんじゃないかと思ったりもする。

 ううん、レイフィースは約束を守ってくれるだろうし、あたいを捨てたりなんか絶対にしない。

 それは分かってはいるんだけれど、あたいは親にも捨てられたくらい価値のない女だから、レイフィースの役に立って少しでも価値を上げたいと思う。


「腰を低くして手の力を抜き、下半身でハルバードを振る感じでやってみてくれ」

「うん、やってみる!」

 レイフィースからハルバードという武器を買ってもらい、魔物と戦う方法をレイフィースから教わった。

 あたいは力があるから簡単に出来ると思っていたのだけれど、武器の先が重くなっているハルバードは、振るたびにあたいの体を引っ張って行ってしまう。


「俺が腰を支えているから、感覚を身に着けてくれ」

「うん!」

 レイフィースの温かい手が、あたいの腰をしっかりと支えてくれている。

 あたいは今までと同じようにハルバードを振ると、レイフィースが支えてくれているので上手く振る事が出来た。

 何度も何度も振り続けて、やっとまともに振れるようになった。


「レフィー、手を放して」

「分かった」

 レイフィースの手が離れるのは寂しいけれど、一人でやらなければレイフィースの役に立てない。

 レイフィースに支えられていた時の様に、下半身にしっかりと力を込めてハルバードを振った。

 ぶんっ!という風を切るいい音と共に、あたいのハルバードが空を切り裂いた。


「いいぞ!その調子で続けて!」

「うん、分かった!」

 時折体を持って行かれそうになるけれど、何とかハルバードを振る事が出来るようになった。


 あたいの鎧が完成し、防具屋で着用してみたのだけれど、胸が締め付けられて苦しかった。

「それは我慢しな。胸を緩くしていると武器を振るのが大変だろう」

「そうだけれど…」

 防具屋のおばさんの言う通り、ハルバードを振る時に胸が邪魔だと思っていた。

 あたいの唯一自慢できる胸をレイフィースに見せられないのが残念だけれど、それは汗を拭いてもらう時に見てもらえればいいかと納得した。

 防具を着たあたいは、初めて魔物と戦う事になった。


「いいか、練習通りハルバードを振る事だけを考えていればいい。

 失敗しても、俺が守るから安心してくれ」

「うん、分かった!」

 あたいが戦う魔物はグラスラットと言う名の魔物で、誰でも簡単に倒す事が出来る魔物らしい。

 大きさは五十センチだけれど、鋭い歯は金属の鎧も嚙み砕くほど力強い。

 噛まれれば大怪我をしてしまうけれど、近づかせる前に倒せばいいそうだし、あたいのハルバードもそういう武器だから大丈夫だ。

 だけど、いざ魔物があたいに襲い掛かってくれば、怖いと思ってしまう。

 レイフィースに気づかれたのか、あたいの横でしゃがんでいるレイフィースが、そっとあたい足を触ってくれた。

 それだけで怖さが無くなり、練習通りにハルバードを振る事が出来た。


「よくやった!」

「うん、倒せた!」

 あたいの振ったハルバードは、あたいに向けてまっすぐ走って来たグラスラットに当たり、グラスラットを横に吹き飛ばした!

 レイフィースは、あたいが倒したグラスラットを手に持って戻って来てくれて、それを今晩の夕食にしてくれると言ってくれた。

 初めて自分で倒したグラスラットは、レイフィースが美味しく料理してくれたので、お腹いっぱいになるまで食べる事が出来た。


「レフィー、あたいもゲイザーを倒してみたい!」

「うーん、ミュールでは倒せないな」

「そうなんだ…」

 あたいが倒せる魔物は買い取り額が安く、ほとんどあたいとレイフィースが食べる食事になっている。

 あたいもゲイザーを倒してレイフィースの役に立ちたいと思ったんだけれど、レイフィースは危険だと言ってゲイザーとは戦わせてはくれなかった。

 事実として、レイフィースがゲイザーと戦っている時にこっそりレイフィースの後ろから覗き見したら、ゲイザーと目が合って麻痺させられてしまった。

 それでも、目を瞑りながらレイフィースに指示してもらえば何とかならないかとも思ったんだけれど、ゲイザーは麻痺だけではなく魔法も使ってくるから駄目だと言われた。


「魔物はあたいが運ぶ!」

「それはありがたいけれど、ミュールは歩くだけで疲れるだろ?もう少し慣れて来た時にはお願いする」

「分かった…」

 普通に歩くだけならそこまで疲れないけれど、道が無い場所を歩き続けるからとても疲れる。

 力はあるから魔物なんて簡単に運べるんだけれど、それと疲れる事は別の話だから仕方がない。

 少しずつ、あたいの役に立てそうなことを探して、レイフィースの役に立って行こうと思う。

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