第十六話 ハンター活動 その三

「ミュールはどの武器を使いたい?」

「うーん、レフィーはどれが良いと思う?」

「そうだな、ミュールの能力を考えるとハルバードなんかどうだ?」

「大きいけど、あたいに使いこなせるかな?」

「慣れが必要だが、それはどの武器を選んでも同じだからな」

「うん、じゃぁこれにする!」

 ミュリエルが魔物と戦いたいというので、武器屋へとやって来た。

 この後防具屋にも行き、ミュリエルの防具も買ってやる予定だ。

 ミュリエルの能力は身体強化で、私よりも力が強い。

 フォルガ村で同じ能力を持っていた人は戦斧を使っていたが、魔物の懐まで踏み込まないと攻撃が当てられない戦斧は危険すぎる。

 柄の長いハルバードだと、遠距離から攻撃出来て比較的安全だ。

 魔物と戦うのだから危険がゼロになる事はないが、減らすことは出来る。

 私も弓と槍で戦い、出来る限り魔物と接近しないようにして戦っている。

 フォルガ村で一応剣術も習ってはいたが、私には向いていなかった。

 お父さんが弓の名手だったこともあり、私も必然と弓を中心とした狩りを覚えて行っただけなのだがな。


 ハルバードを手にしてご機嫌のミュリエルを連れて、防具屋へとやって来た。


「トロールの皮を使って、この子の防具を作ってくれないか?」

「おうよ、最低でも小銀貨二枚するが金はあるのか?」

「問題ない」

 防具屋のおやじにミュリエルの防具を頼むと、奥からおやじの奥さんが出て来てミュリエルを奥に連れて行った。


「レフィー!」

「心配するな、防具の寸法を測ってもらうだけだ」

 ミュリエルは私に売られたと勘違いしたのか、涙目になりながら連れていかれていた。


「完成は早くて五日後だ」

「分かった」

 ミュリエルの武器と防具を買った事でお金をほとんど使い果たしたが、ミュリエルの安全を考えれば必要な事だった。

 今まで防具もつけずに、魔物のいる場所に連れて行ってたことが問題だ。

 ミュリエルが私から離れたがらなかったし、私としてもミュリエルを一人で置いてはいけなかったからな…。


「ミュール、防具が出来上がるのは五日後になるが、お金が少なくなったので狩りに出かけようと思うがいいか?」

「うん、分かった!」

「だが、防具を着るまで魔物とは戦わせないからな?」

「う、うん…分かった」

 ミュリエルは、もう魔物と戦う気になっていたが、防具が出来上がるまでは戦わせることは出来ない。

 それまで、ハルバードの使い方を教えるくらいはしておこうと思う。


「へぇ、君たちが最近噂になっているゲイザー狩りのお二人か」

 ハンターギルドにゲイザーを狩って帰ると、見事な金属鎧に身を包んだ男達に声を掛けられた。

 首から下がっているバッチを見ると、銀一級だったから腕の立つハンターだというのはすぐに分かった。


「噂は知らないが、見ての通りゲイザーは狩ってきた。それがどうかしたのか?」

「いいや、どうもしないさ。ただ、邪魔なゲイザーを狩ってくれるのはこっちにとっては嬉しい事だからな。

 何なら、ハンターギルドが知らないゲイザーの生息地を教えてやってもいいぜ」

「必要ない」

「そうか、必要になったらいつもで聞きに来てくれ」

 銀一級のハンター達は、私が軽くあしらうと興味が無くなったのか、他のハンター達に声を掛けに行ってしまった。

 今の所ハンターギルドから得られる情報で上手く狩りが出来てはいるが、ハンターから現場の状況を聞くのは悪い話ではない。

 ハンターギルドの情報より、現場で狩りをしているハンターの方が正確な情報を持っているからな。

 聞いておけばよかったと後悔したが、またいずれ会った時にでも聞こうと思う。

 それと、軽くあしらったのには理由がある。

 私とミュリエルの稼ぎにあやかろうとして、声を掛けてくるハンターが多いからだ。

 今の所、他のハンターと組んで仕事をしようとは思っていないし、ミュリエルも嫌がっているからな。

 だけど、ミュリエルの安全を考えれば、他のハンターと組むのも悪くない考えだ。

 今の所稼ぐのには困っていないし、今後どうするかについてはミュリエルと話し合っていく必要があるな。

 買取を終えて宿屋に帰ろうとしていると、女性ハンターに声を掛けられた。


「あら~、いい男ね~。あたくしの名はシャリーよ~。あたくしを仲間に入れてくださらないかしら~?」

「いや、仲間は間に合っている。他を当たってくれ」

「あら~、連れないわね~。あたくしは一人で寂しい思いをしているの~、少しくらい考えてくれてもいいじゃない~?」

「そう言われてもな…」

「ちっ!おばさんはあっち行け!」

「ミュール、それは言いすぎだ。すまない、仲間が酷い事を言った。謝罪する」

「あら~、あたくしがおばさんなのは事実だから怒ってはいないわ~。謝罪は良いから仲間に入れてくれないかしら~?」

「すまない、仲間は募集していない」

「残念だわ~。気が変わったらいつでも誘って欲しいわ~」

 女性ハンターは、あっさりと私達から離れて行ってくれた。

 ミュリエルの言った通り四十過ぎのおばさんだったが、悪い人ではなさそうかな?

 経験も豊富そうだし、ミュリエルが許せば仲間に入って貰うのは悪くなさそうだ。

 でも、ミュリエルが魔物と戦えるようになるまでは、仲間を増やす余裕はないな。

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